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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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灼熱地獄の果てにフェアリーを見つけた、この夏。
 6月の半ば頃だっただろうか。
仕事から帰ってみると、アパートの周囲に巨大な足場が組まれていた。
足場の外側は更に安全対策の緑のネットで覆われている。
いったい何事だろう。
怪訝に思いながらもネットをくぐって奥に進むと、
入口の掲示板に張り紙がしてあり、
どうやら大がかりな外壁塗装工事が始まるらしいとわかった。
期間は約3週間。
なるほど。いい加減ボロなアパートだから、
見た目だけでもリフォームしようというわけか。
ご苦労なことだ。
今さら外装を取り繕ったところで、どうなるものでもなかろうに。
そんなことを考えながら部屋に入り、ふとあたりを見回したとき、
あれ? と違和感を覚えた。
いや、実際には違和感どころではない。
ほとんど愕然とした。
まッ、窓が! 窓がーッ!!
窓の外側が、何やら半透明のビニールで覆われている。
とりあえず窓を開け放ってみたが、そこに見慣れた外の景色はなく、
あるのはビシッと張り詰めたビニールの膜だった。
いったい誰がこんなマネを──と、疑問するまでもない。
いわゆる養生というやつである。
しかもこの養生、さすがに職人技というべきか、
窓枠の隅から隅までぴっちりとテープで固定されており
(といっても内側からは見えないのだが)
まさに一分の隙もない、という見事な出来栄え。
僅かなペンキの粒子も通過させまいという心意気に充ち満ちている。
しかし、窓を開けても外が見えない、風も入ってこない、
というのは些か息苦しいような。
図らずも密室状態になっているし。
あまり開放的なのは好みではないが、
といって、こうまで圧迫感があるのも問題だろう。
というか、この職人、ご丁寧にエアコンの裏側まで養生している。

きっと知らない人が増えているのではないかと思われるが、
エアコンには幾つか種類があって、
室外機から余熱を放出するタイプのやつと、
そうでないレアなタイプのやつがある。
うちのエアコンはレアなタイプのやつだ。
つまり、排気ファンと本体が一体化しており、
開けた窓の隙間に取りつけて使用する。
ファンは本体の背面にあり、直接熱風を外に吐き出すのだ。

その吐き出す窓の隙間が養生された。
しかも職人の手による完璧な養生である。
窓とビニールの間の狭い空間はまさに密閉状態。
仮にエアコンが稼働した場合、
背部のファンから吐き出された熱風は、
その狭い密閉空間に吹きだまり……。
瞬間、恐るべき可能性が脳裏を掠めたが、
目を背けてねじ伏せた。
折しも季節は梅雨まっさかり。
今年の梅雨はずいぶん長いらしく、まだまだ明けるのは先らしい。
梅雨といっても雨の日は少なく、曇天が続いていて過ごしやすいし、
下手をしたら朝方などまだ寒いと感じる日だってあるくらいだ。
もしかしたら冷夏の可能性だってなくはないし。
なぁに、たったの3週間じゃないか。
大丈夫、大丈夫。

3週間後。

甘かった。
「雨天の場合は予定が遅れる場合があります」
ちゃんと工事日程表にも書かれていた。
7月に突入しても梅雨は明けず、
雨、雨、雨、で工事日程はずいぶん遅れているらしかった。
予定の終了日が過ぎても、
アパートを取り囲む足場とネットが取り外されることはなく、
無論、窓の養生もそのままである。
変わったことといえば、水色だった入口のドアが
濃いブルーに塗り替えられたことくらいか。
まったく、勝手なことをしてくれる。
外側だけ青くしてしまって、内側は水色のままじゃないか。
何このツートンカラー。
しかし、職人たちだってサボりたくてサボっているのではない。
すべて雨のせいだ。
雨のせいで工事が遅れて……気がつけばすっかり梅雨が明けている。

地獄が始まったのはそれからだ。
あの気の早い真夏日、品川かどこかで36℃だかを記録したあの日、
うちのアパートの窓はぴっちりビニールで覆われていた。
これはつまりビニールハウスと同じ構造である。
ビニールハウスと違うのは、
中で栽培されているのが植物ではなくて人間であるということ。
帰ってくるなり、窓を開け放った。
養生のおかげでペンキは一滴たりとも侵入していなかったが、
しかし、ひとそよぎの風すらも入ってこない。
明らかに部屋の中より外の方が涼しい。
試しにエアコンをつけてみたが、
バサバサと勢いよく養生ビニールを揺らしたエアコンは、
その後、五分足らずで沈黙した。
無論、予測していたことだった。
余熱を逃がせない機械は数分で停止する。

熱帯夜。
密室状態のビニールハウス。
風は入ってこない。
エアコンも使えない。
この夏、この部屋ほどエコな場所はないのではないか?

ああもう。
養生ビニールが憎くてならない。
遅々として進まない塗装工事にも腹が立つ。
しかし、勝手に養生を剥がすわけにもいかず、
妥協策として、養生の一部を引っぺがすことにした。
といっても慎ましいものだ。
養生の隅を、僅か20センチほど剥がしただけだ。
それでもそのとき吹き込んできた生ぬるい風には、
ベホイミくらいの効果があったと思われる。
残念ながらエアコンの復活は叶わなかったものの、
それで3週ほどやり過ごすことができた。
が、しかし、
7月の半ばを過ぎても工事が終わらないというのはどういうことか?
そろそろ暑さが洒落にならない。
暑いと言うより熱いという方が正しい。まさにその通り。
本当に工事なんてしているのか? と疑いたくなる。

この頃の生活というのは、ほとんど発狂寸前だ。
昼間、部屋にいるだけで汗が滝のように溢れ出す。
イライラなど通り越して、すでにぐったりしている。
なんだか食欲もなくなって、
これ幸いとばかりに毎日安いカレーばかりを食っていた。
毎日毎日、足場が取り外されていることだけを願って帰宅したし、
暑くて寝られないから、寝ようと思って寝るのではなく、
身体が眠さに耐えられなくなって寝る、という生活を続けた。
そうして、昼間部屋にいることになるから、
休日が来るのが嫌だな、
なんていう信じがたい発想さえ持つに至った。
しかし、気持ちが滅入ったらいかん、という思いから、
無理矢理に前向きを装い、
暑さと闘う自分を修行僧か何かのように思い込んで、
ひたすらゲームをプレイし続けた。

そんなある土曜の朝。
少々暑さに頭がやられていたのだろうか。
部屋の外から聞こえてくる話し声で目を覚ました。
午前7時。休日にしては早い時間だ。
話し声は何を言っているのかよく聞き取れないが、ベラベラベラベラ
部屋の窓のすぐ近くから、ひっきりなしに聞こえてくる。
わりと大声。
聞き取りにくいのは、方言のような独特な口調のせいか。
うるさかった。
30分くらい経ってもずっと続いているので、
さすがにイライラしてきた。
まったく、人のうちの前で何のつもりだ。
そう思ってコンビニに行くついでにちょっと様子を見ることにした。
すると。

アパートの正面、
俺の部屋のすぐ前に、フェアリーたちが集っていた。
3人いる。
一人はレッドマン。見ればわかる。見まごうはずもない。
もう一人は、おばちゃんだ。
見覚えがある。
そうだ。
以前、俺の部屋に侵入しようとしてきた二階に住んでるおばちゃんだった。
最後の一人は新人だが、去年くらいに一階に越してきたおっさんだ。
日曜になると大音量で演歌か何かを流してカラオケをやっている。
その3人が、俺の部屋の前の道路にしゃがみ込んで、
何やらベラベラとお喋りをしているのだ。

ああ、なんという凄まじいメンツ!
歌舞伎者勢揃い!!!!
俺は今、奇跡のような光景を見ているのではないか?
それはまさに真夏の朝の夢。
フェアリーたちの集い。

でもそれは別段奇跡でもなくて、その翌週も翌々週も
同じ時間に同じ場所で見ることができた。
きっと俺が見てないだけで、平日もやってるんだろう。
そしてフェアリーたちの集いは毎回2時間くらい続くので、
そのすぐ隣のサウナの中でゲームをやっている俺は、
このままだと何か悪い病気になるかもしれないと思って
あの憎たらしい養生を全部引っぺがしてやりました。
comments(8)
か、かなり過酷な夏をお過ごしになられたのですね...

単語のレベルが高くて、毎回楽しませてもらってます!
| パカロニ | 2011/04/21 7:02 PM |
いつも見に来てくれてありがとうございます。
これ、もう何年も前の話だけどね。。。
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