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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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青春時代
「私、行かないことにしたわ」

女性はそう言うと、足を組み換えながら煙草に火を点けた。
天井に向けて吐き出す煙。

「でも、誤解しないで。あのリーダーのことが気に入らないわけじゃないの」

「・・・・・・」

女性の目の前に座っている男は、俯いたままだ。
何かに耐えているように見える。

「ああいった気質は、リーダーとしてなくてはならないものだわ。
私がナンバー2に甘んじているのも、あの強引さが足りないせいだと思ってる」

「・・・・・・」

「ただね。今回の合宿、実りのあるものになるとは、どうしても思えないの。メンバー個々の動きが、まだばらばら。到底合わせられるレベルになってないわ」

女性は前髪を掻き上げ、頭を小さく左右に振る。
再び煙草の煙を天井に向けて吐き出す。

「ねえ新人クン。君が見たってわかるでしょう。リーダーが何をそんなに急いでいるのかわからない。私がリーダーの座を脅かしているとでも考えているのかしら。人気を集めようと躍起になって、挙句の果てに今回のような強引な合宿計画。ちょっとおかしくなってるんじゃないかしら。あの子」

「そ・・・そうでしょうか・・・」

ずっと無言だった、新人クンと呼ばれた男がようやく口を開いた。
一瞬だけ、女性の顔を見た。そしてまた俯いてしまう。
女性の大きく開いた胸元に、目のやりどことがなくて困っているのか、ただ女性を目の前にして緊張しているだけなのか。

「だから私は行かないことに決めたの。さっきも言ったけど、あの子のことが嫌いなわけじゃない。ただナンバー2である私が行かないことで、あの子が少しでも頭を冷やしてくれたら・・・って、そう思ってる」

「ぼ・・・僕はその」

「いいの。私に合わせなくても。新人クン、あなたは行きなさい。憎まれ役は私一人で結構。君にはなにか大きなものを掴んで帰ってきてほしいの」

「・・・・・・」

「ほら、そんなに黙らないで。私がいなくたって、君なら大丈夫よ。君には才能があるわ。努力や根性だけでは追いつけないほどの、天賦の才能があると私は見てるの。だから君はこんなつまらないことで私とあの子のごたごたに巻き込みたくない」

「・・・・・・はあ」

「私の夢は、このサークルを日本一、いえ、世界一の劇団にする事。今回の件も、サークルにとって次のステップに進むための試練なのよ。新人クン、私の夢に手を貸して頂戴」

「え・・・・・・」

女性は従業員を呼び止める。

「すいません。同じものをもう一杯いただける?」

顔から体型から朝青龍にそっくりのその女性は、空になった大ジョッキを高々と掲げ、餃子の王将橋本駅店の店員におかわりを告げた。

僕はその様子を、向かいの席から、笑いを必死にこらえながら眺めていた。回鍋肉が吹き出しそうだった。
なぜ可笑しかったのかは、よくわからない。
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