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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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もう戻せない
通勤電車の移動時間ほど世の中に無駄なものはないが、
とりわけ、すし詰め状態の満員電車で揉みくちゃにされながら立ち尽くしている時間というのは、もう救いようのない程に最低最悪の部類である。

人生は長いようでいて短い。
ひとりの人間に与えられた時間というのは限られていて、目的を果たすためには一分一秒たりとも無駄にすることはできない。
だというのに。
通勤電車とはいったい何だ。何様のつもりだ。
仕事という重大な目的を前にしたサラリーマンが、どうして20分も30分もぼんやり立ち尽くしていなければならないのか。
30分もあれば、ひと狩りしてじゅうぶんお釣りがくるではないか。
いったい、通勤電車のどこに我々の貴重な時間を奪う権利があるというのか。

無論、時間は使いようである。
通勤電車に揺られる数十分ないし数時間を、如何に有意義な時間に変えられるか。
それは通勤者各々に課せられた永遠の命題と言っていい。
通勤電車こそ毎日訪れる珠玉の数十分、とまではいかないにしても、上手くすれば、それなりに価値のある経験をつむことは可能なはずだ。

私はたいてい、本を読む。
本を読むことでこの無意味な時間を価値あるものに変えようと努めている。
読んでいるもの自体の価値については特に触れないが、これは断じて、どうでもいい暇つぶしの類ではない。
暇つぶしというのは手持ちぶさたに、目的もなく無駄な時間を過ごすことだ。
電車の中で興味もない中吊り広告を隅から隅まで丹念に読み漁り、誤字脱字、句読点の位置の一々にまで文句をつけてやろうと目を光らせているような状態がこれにあたる。
私の読書の場合、これは明確な目的を持っているから、決して無駄な時間ではない。
私の読書の目的というのは、もちろん、読破することである。

先日、こんなことがあった。
その日は人身事故の影響で早朝から電車が止まっていた。
折しも通勤ラッシュのピーク時。
駅は携帯電話を耳にあてがう人々で溢れかえり、一向やってくる気配のない上り電車に、サラリーマンたちの苛立ちもピークに達しようかという頃合いだった。
ほどなくして電車の運転は再開されたものの、都合2時間かけてホームに溜め込まれたサラリーマンどもの数といったら。
想像を絶する数のサラリーマンどもが、ようやく到着した電車にわらわらと群がり、すでに満員状態である車両にもかまわず、むりむりと無理矢理に乗り込んでいく。乗り込んでいくというより、自ら肉壁にめり込んでゆく。
手足は言うに及ばず、内臓までもが自由を奪われ、何百という人間がぎゅうぎゅうと圧迫され続ける筒状の車内は、さながら人肉ソーセージのようで、吐き気を催す。
飽和状態の更に上、これ以上は物理的に不可能という人口密集地で、私は本を読んでいた。
いや、読もうと試みていた。
何故なら、私には本を読破するという崇高な目的があったからだ。
私はこれからの数十分を価値ある時間に変えなくてはならない。
たとえそこが人肉ソーセージの内部であろうと、この目的を達成するためには決して苦難を厭うてはならないのである。

しかし状況が状況だけに、この読書は困難の連続だった。
普段であれば30センチほど本を体から離して、ちょうど良い距離で文字を追えるのだが、このときはあまりの人間の密集ぶりに、文字と両眼との距離は、おそらく5センチ以内になっていた。
もう、開いた本が鼻先にくっついている。
芳しい紙の匂いさえ嗅げるほどだ。
むろん、文章を判読することなど不可能に近い。
それでもどうにかして読んでやろうと躍起になっていると、2駅ほど通過したあたりで、隣からほとんど殺気に近い気配が感じられた。
見ると、丸々とよく肥えたおっさんが、忌々しげな目つきでこちらを睨んでいる。
私ははたと気がついた。
よもや肘でも当ててしまったか、と素早く近辺を検めたが、このすし詰め状態で互いの体が接触しないはずもない。
完全に密着して、肘鉄を食らわすことの方が難しいのだ。
では何故、このおっさんは私を標的にしているのか。
するとおっさんが舌打ち混じりに言う。
「こんなときに本なんか読むなよ」と。

カチンときた。
こんなときとはどんなときだ。
むしろこんなときだからこそ、私は本の角が人に触れたりしないよう、常に細心の注意を払っていたのだ。
そのおかげで、本はほとんど顔面にくっついてしまって、文字などまったく読めていないのである。
だというのに、このおっさんときたら、私が悠々と本を読んでいるとでも思ったか。
本を顔面に押しつけて立っている男の惨めさも知らないで。
迷惑というなら、あんたの腹の方がよっぽど迷惑だ。
それに、あっちの奥でPSPに興じている若者は迷惑ではないとでもいうのか。
ごつごつしたでかいバッグを足下に置いている、あの登山家らしき男は迷惑ではないとでもいうのか。
私は思わず叫びたい衝動に駆られたが、どうにかこらえた。
あまりの密集状態に皆、イライラしている。
普段なら気にもしないことが、ついつい気になってしまう。
それだけのことだ。
しかし、ここで頭を下げるのも癪だったので、「戻せない」とだけ、ありのままの事実を伝えた。
戻せない。本当に。
あまりに人が密集しすぎて、本を鞄に戻すことさえできなかった。
仕方がないので、私は本を顔面に押しつけたまましばらくやり過ごさなくてはならなかった。

それにしても。
腹が立つのは、このおっさんの主張だった。
このおっさんは、満員電車の中で本なんか読むなと言う。
くどいようだが、私は人の迷惑にならないよう、それこそぴったりと、開いた本を顔面に押しつけていたのだから、本自体が迷惑だったということはあるまい。
事実、このおっさんに私の本は少しも接触していなかった。
するとこのおっさんが文句を言ったのは、本自体ではなく、本を読んでいる私に対して、ということになる。
それはつまり、
「みんなが苦しんでるときに、一人だけ本なんか読んで面白がってんじゃねぇよ」
という、道徳的な意味合いだったのではないだろうか。
馬鹿を言うな、と言ってやりたい。
私は決して面白がってなどいなかったし、そもそも本だって読めていなかったのだ。
そして何よりも、
「みんなが苦しんでるんだからお前も苦しめ」
という、その理不尽極まる蒙昧な主張が許せない。
なるほど。ともすると、戦後高度経済成長期の日本には、そんな風潮があったかもしれない。が、
まったく度し難い、というものだ。
よしんばこのおっさんの主張に従い、皆でこの苦しみに耐えたとして、そこに待っているものはいったい何か。
満員電車で揉みくちゃにされて、隣にいる赤の他人を憎らしく思い、遅れの原因を作った事故者、あるいは自殺者を傍迷惑な人間と蔑み、ねちねちと愚痴を言い、ひたすら遅刻の言い訳を考えて暇を潰す。

まったく、なんという無駄な時間。
世の中にこれほど無為で無駄な時間があるだろうか。
ただぼんやり突っ立っているよりも程度が低い。
あのおっさんは、私にそんな時間を強要したのだ。
そう思うと無性に腹が立ってきて、意地でも本を読んでやろうという気持ちになった。
私はこの本を読破する。
明確な目的を持つ私は、暇つぶしで揉みくちゃになっている人々とは違う。
もう本の角が人に当たろうがどうしようが、知ったことではない。
この目的は他人の不快を凌駕する。

そうして、公衆道徳などクソ喰らえ、という気持ちで本を読み続けたのだが、いったいそのとき何の本を読んでいたのか、今になってどうしても思い出せないので困る。
comments(4)
ヒント おっさんはデブ
| ナナカ | 2008/11/29 8:58 PM |
私は満員電車の車内でネタを考えていて笑ってしまったことがあります。
| スネ夫 | 2008/12/04 11:11 PM |
コメント遅くなってしまってごめんなさい
いつもありがとう
仕事超忙しくて死にそうです 誰か助けて

>スネ夫
満員電車の車内、目の前で笑われたことならあるよ

>ナナカ
鼻息がやたらとやかましいよね
| 類二 | 2008/12/17 8:07 PM |
Thanks for the recommendations on credit repair on this amazing web-site. Some tips i would advice people would be to give up the mentality that they may buy right now and shell out later. As a society all of us tend to do that for many things. This includes trips, furniture, plus items we’d like. However, you must separate one’s wants out of the needs. If you are working to improve your credit score you really have to make some trade-offs. For example you’ll be able to shop online to economize or you can visit second hand outlets instead of high-priced department stores regarding clothing.
| Kayla | 2014/01/22 5:16 PM |










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