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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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吾輩は (上)
朝、目が覚めるとプリズニャンになっていた。

プリズニャンは気楽でうらやましいなー、なんて思っていたけれど、実際にプリズニャンになってみるとそうでもない。
傍目に見るのと実際とではずいぶん違うものだ。
一見、息ぴったりの電池と豆電球の関係にも微妙な齟齬があるみたいに、プリズニャンにだってプリズニャンなりの苦悩がある。
生きているということは、もうそれだけで苦悩みたいなものなんだろう。
それにしても、これから会社に行かなくてはならないというのに、プリズニャンなんかになってしまって、大丈夫だろうか?

さて、プリズニャンになって困ったこととといえば。
まず、あの衝撃のシマシマ模様が自分では案外見えにくい、ということがショックだった。
可愛らしい生き物というのは、もしかすると自分の可愛らしさに気がついていない可能性が高いのではないか?
それからあと、普通に歩くことが案外難しい。
今まで両手を地面につけて歩くことなんてなかったから、その格好自体に抵抗があるし、妙に体が柔らかくてしっくりこない。
コンニャクみたいにフニャフニャだ。
それでも「プリズニャンが二足歩行はまずいよなぁ」と思って、結局四足歩行することにした。
したはいいけど、どうにもぎこちない。
とりあえず右手を一歩前に。次いで左足、左手、右足、というようにカメレオンさながら、いちいち確認しながら移動していく。
だから動きが非常にスローでイライラする。
あまりにも思うように歩けないので、思い切って立ち上がってみたが、そっちの方がよっぽど難しいことに気がついた。
こういう難しいことを平気でこなしている本物のプリズニャンは本当に偉いなぁと思う。

それでも、しばらく我慢して四足歩行を続けているとさすがに馴れてきて、どうにかまともに歩けるようになった。
真っ直ぐ進もうと思えば進めるし、ここで曲がろうと思えば、ほとんど自在に曲がることができる。
バックだってできる。
見た目以上に手足が短いのには辟易したが、人間はどんな環境にも適応できるものだ。

それからしばらく同じ場所をぐるぐる歩き回るなどして独自の訓練を続けた。
結果、これでほぼ歩行はマスターしたかな、と自分なりに納得し始めた頃、ふと、本当にこういう動きでいいのかなぁ? と疑問を覚えるようになった。
これまではとりあえず自分の動きやすいように動いて、一番無理のないスタイルで結果的に目的を果たせればいい、という思いで行動していたわけだが、それが果たして正しいプリズニャンの動きだろうか?

記憶を端から引っ張り出してみたが、プリズニャンの正しい歩き方を思い出すことはできなかった。
もしかしたら、右の前足と後ろ足が一緒に前にでるのかもしれないし、右前足と左後足が同時に動くのかもしれない。
実は歩かずにゴロゴロ転がりながら前進するのかもしれない。

こうなると急に不安になった。
もしもみっともない歩き方だったらどうしよう。
知らない人が見てもちゃんとプリズニャンに見えるだろうか?
見た目はプリズニャンなのに、動きでベロニャーゴだと思われたら最悪だ。
そういうことをあれこれ考えてしまうと立ち行かなくなる。
世間体というのかな、こういうの。
あまり気にしたくないけど、でもわりと大事なんだよね、こういうの。
これからプリズニャンとして生きていくからには、せめてプリズニャンらしく振る舞わなくては。
ああでも。
このときほどプリズニャンの正しい歩き方をちゃんと勉強しておけばよかったと強く思ったことはない。

で。
やっぱりどうにも気になって仕方がないので、とりあえず鏡の前まで行くことにした。
こういうことはちゃんと確認しておかないと気持ちが悪い。
確認して気持ちが良くなればプリズニャンになれるのか、といえばた甚だ疑問なのだけれども。
まあいい。ナルシストは何も自分の美しさだけを追求しているわけではあるまい。
せめてプリズニャンぽく見えればそれで良いのだ。
「ぽい」ってだけで、案外許してくれる人は多いものだから。
にゃんにゃんにゃーん、と鏡に向かう。
しかしところが。
なんと鏡が見えない。
鏡は高さ1メートルくらいの机の上に置いてあって、プリズニャンの背丈ではとても届かないのだ。
でも、プリズニャンならピョンと飛び跳ねれば届く距離だ。
あいつらは信じられないくらい高いところでもジャンプして登ってしまう。
そういう光景は以前に何度か目にしたことがあったので、ああ、プリズニャンならよかったのにと思った。

いやはや参った。
参った魚は目でわかる。
しかしさてはてどうしたものか。
もちろんこういうときには思い切りが大切だということはよく知っていた。
なせばなる。一か八か、自分の力を信じてやってみる。きっとできる。
そうだ、思い切りと思い込みが重要なのだ!
さあ!
跳べ! 跳べ 翔べ!

しかし、実のところ、とてもそうは思えなかった。
そうりゃあそうだ。
どう頑張ったって、人間、自分の背丈の3倍近くあるところまでジャンプできるわけがない。
しかも、両手を床に着けた姿勢でだぞ?
いくら見た目がプリズニャンだからって、そんなの……。
仕方がないのであきらめることにした。

なんだか急に色々なことが面倒くさくなった。
「まぁいいか、プリズニャンだし」
そう思ったら眠くなった。
馴れない体で動き回ったせいかもしれない。
うつらうつらと瞼が重くなった。
参ったなぁ。これから仕事に行かなきゃ行けないのに。
でも、俺今プリズニャンだしなぁ。
猫みたいに前肢でくりくり目元を擦ってみたりする。
日差しがとても気持ちよくて、お尻のあたりがムズムズした。
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