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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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虫歯ラプソディ
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はがいたい
歯が痛い

歯が痛いっつーの。


私はソフト開発業に従事している。
急ピッチで開発が進められているプロジェクトのため、残業や休日出勤が増え、満足な休息を得られないまま働き続けている毎日である。
そのときも私は、ソフトの仕様変更や機能追加が重なり、難解かつ複雑になってしまったシーケンス図と格闘しながら、プログラム設計書を作成していた。

タバコをやめた私にとって、集中力持続と眠気防止のためにはガムが欠かせない。
一度に二粒、口の中に放り込み、噛み始めた。
そのときである。
ズン、という鈍い感触が奥歯から伝わってきた。
そして強烈な痛みが全身を襲った。
私のすべての動きが、止まってしまった。

「あ…ああ…あああ…あ…あああ…ああ」
声にならない。
痛い。
歯が痛い。
虫歯だ。
舌でまさぐる。
歯に穴が開いているのがわかる。
間違いない。
虫歯……

私の不審な様子に気づいたのか、後輩のKが声をかけてきた。
「どうしたんスか類二さん。いつも以上に不審な様子ッスね」
「い、痛い…」
「痛い?類二さんが痛い人なのはみんな知ってますよ。何を今さら」
「それはそれで問い詰める必要があるが、今はそうじゃない。歯だ」
「歯が?歯がどうかしたんスか」
「歯が痛い」
「虫歯ならまかせてください。自分、虫歯得意ッス」
「意味がわからん。虫歯に得意とか不得意とかあるのか」
「ちょっと虫歯にはうるさいッスよ自分。差し歯だし。もはやプロ略してプロフェッショナルです」
「虫歯になるプロということか。それにしても差し歯とは、なかなか気合入ってるな。略し方は逆だと思うが」
「へへ。まあ、何でもアドバイスしますよ」
「よし。では教えてくれ。俺はこれからどうしたらいい?」
「歯医者行ったらいいッスよ。特に類二さんみたいな人生の敗者は」
「この野郎。俺に向かってその言い草は何だ」
「類二さんこそ、歯が痛いというからアドバイスしてあげたのに、その言い草は何スか」
「何て奴だ。しかし痛い。全然治まらない。今日一日の仕事が終わるまでどうしたものか」
「虫歯だけに、無視したらいいんじゃないッスか(笑)」
「お前こそ、医者に診てもらったほうがいい」
「ツバつけときゃ治るって、ばあちゃんが言ってましたよ」
「膝すりむいたのとわけが違う。だいたい口の中なんだから常にツバまみれだ。バカなこというな」
「わかりました。類二さんがそこまで言うのなら、ひと肌脱ぎましょう。っていうかひと歯脱ぎましょう。私の差し歯、差し上げます。差し歯だけに。どうぞ使ってください」
「いるかそんなもの。お前にかかわった俺がバカだった。仕事の話をしよう。プログラム設計書のドラフト版には目を通したか?」
「はい。排他制御とか完璧ですね。ご自分の歯痛は全然制御できないくせに」
「お前と話していると、虫歯どころか頭まで痛くなってくるようだ」
「頭で思い出しました。市販の頭痛薬なら歯痛にも効きますよ」
「おお、久しぶりにまともなアドバイスではないか。それなら会社に常備してあるはずだ。持ってきてくれるか」

頭痛薬を飲んでしばらくすると、歯の痛みは消えていった。嘘のようである。
これで気を良くした私は、その後歯のことなどすっかり忘れ、普段より多めにガムを噛みながら、午後の仕事に打ち込んだ。
しかし、夕方近くになり、また急に痛み出した。しかも、先ほどよりも痛みがパワーアップしている。嘘のようである。
私はたまらず後輩Kを呼んだ。

「どうしたんスか」
「どうしたもこうしたもあるか。歯が痛い。単純計算で先ほどの2倍の痛さだ。頭痛薬が切れたのか?」
「そうでしょう。あれはただの鎮痛剤です。一時的に神経を麻痺させてたようなもんスからね」
「おのれ。くそう。さっきより今のほうが断然痛いぞ」
「麻痺させてる間にも、虫歯は進行しますからね。最近の虫歯はなかなかどうして、成長が早いッスね」
「なんだその理由は。今どきの虫歯は今どきの子どもか」
「そうはいいませんが、まあ自分が虫歯菌なら、痛みが止まっていればこれ幸いと、穴掘りに精を出すでしょうね」
「おい。どうにかしろ。もう鎮痛剤のような一時しのぎはだめだ。根本的解決の方法を教えろ」
「今まで、仕事で作ってきたシステムでバグ出しても一時しのぎばっかりで難を逃れてきた類二さんのせりふとは思えません。"グローバル変数の類二"又の名を"GOTOの類二"の異名が泣きますよ」
「くっ。何とでも言え。納期を守るためには仕方ないのだ」
「それはいいとして、歯医者行かなきゃ無理ッスよ根本解決なんて」
「歯医者か。それしか方法はないのか」
「はい。たぶん歯の根っこが腐ってるでしょうから、文字通り根本的にというか、抜本的に解決しないとだめッスね」
「腐っているのか。そんなにひどいのか」
「類二さんて、ほら、性根も腐ってるでしょう?今痛んでいる歯の根っこも、それ同程度だと思えば」
「おい。いくらなんでも失礼だ。俺の歯に対して」
「べつに類二さんのどこが腐っていようと構わないんスけど、歯医者にだけは行かないとマズいんじゃないスか」
「できれば行きたくない。い、いや、何と言うか、その」
「ははあ。類二さん歯医者が怖いんスね」
「まあ、そうとも言う」
「類二さん。30にもなって歯医者が怖いなんて、もう笑い話を通り越して一人漫談ですよ」
「意味がわからない。だいたい、医者に行くとか歯医者に行くとか、日本語がおかしいではないか。病院に行く、とか歯科医院に行く、が正しかろう。ただ歯科ろう。なんちゃって」
「かわいそうな類二さん。歯が痛すぎて、どうかなってしまったんスね」
「なるか馬鹿。俺は言葉に厳格なだけだ。そしてちょっとお茶目なだけだ」
「お言葉ですが、厳密に言うなら歯が痛いも変ですよ。痛みを感じるのは歯の神経です」
「それはアリだろうが。歯の神経もひっくるめて歯と呼ぶんだ普通は」
「あまり考えすぎてカッカすると歯の神経もより痛みますよ」
「そうか。すると冷やすと痛みも治まるのか?」
「治まるんじゃネーの?」
「何で急にタメ口になるんだ。おい、どうしたら効率よく冷えるか教えろ」

「冷湿布もってきました。これを虫歯に詰めれば完璧かと」
「たわけ者。そんな白いもん虫歯に詰めたらいい歯と見分けがつかなくなって虫歯が消えたと勘違いしてしまうだろうが」
「・・・」
「・・・。他に方法はないのか」
「歯医者行くしかないッスよ類二さん」
「どうしてもか」
「はい」
「行きたくない」
「行かなきゃ絶対治りませんよ」
「だから困っている」
「行けばいいのに」
「正確に言うと、とても行きたい。行けばとりあえず痛くなくなるわけだからな。だが俺は、歯医者など二度と行くものかと10年ほど前に誓いを立てたのだ」
「10年前に何があったんスか。べつにどうでもいいけど」
「かくかくしかじか(※)だ。そんなわけで俺の金輪際行きたくない場所ベスト3にランクインしている非人気スポットでありながら、今現在に限ってはとても行きたい。この矛盾を解決しろ」
「人間は矛盾を抱えた生き物です。ここで類二さんが歯医者に行ったとしても、敗者であることに変わりはありません」
「前半いいこと言った気がするが、後半よく聞こえなかった」
「もう一度言いましょうか」
「遠慮する。おい、歯医者に行く覚悟を決める準備をする決意を固める算段を整えるから、今回の虫歯だと治療の際にどれくらい痛いのか教えてくれ」
「わかりました。ちょっと、虫歯を見せてください」
「お安い御用だ。ほれ。穴の開くほど見るがいい。すでに開いているが」
「これはすごいッスね。阿蘇山と間違えそうです。さすが類二さんほどの大物になると虫歯の規模も違いますね」
「俺の歯はカルデラか。なんだか褒められているようで恥ずかしいから穴があったら入りたい。突っ込みは不要だ」
「あっ。となりの歯にも大穴が開いてますよ。イチローもびっくりのマルチ虫歯です。歯の本数の関係で2000本虫歯を狙えないのが少々残念ですけど」
「なんと。どおりですこぶる痛いわけだ。くそっ。歯め。忌々しい。」
「類二さん。歯に対してそれはあんまりッス。恨むなら虫歯菌じゃないッスか」
「おっと、その通りだ。くそっ。虫歯菌め。忌々しい。軽々しく穴あけやがって。お前はもぐらか」
「もぐらの神からの贈り物なんじゃないスか。その虫歯」
「せめて虫歯の穴からプチもぐらでも出てくれば喜んで飼育してやるが、その可能性は俺の試算によると0%だ」
「虫歯菌への罵倒も済んだところで、いよいよ歯医者行くのですね」
「お、おうよ。何か言い残すことはないか」
「それは、どちらかというとこっちのせりふです」
「そうか。では、何か聞き残したことはないか」
「今の率直なお気持ちを」
「死刑台に上る死刑囚を見守る、刑を終えた死刑囚のような心境だ」
「まだ歯医者に到着したわけでもないのに、気が早いッスね」
「歯医者のドアをくぐったときの匂いと、あの治療器具の音が、耐え難い苦痛なのだ」
「それに耐え抜けば、歯の痛みとも無縁になるじゃないスか」
「そうだな。よし。気持ちを切り替えるとしよう」
「ついに本気になりましたか」
「いろいろとアドバイスをありがとう。歯医者など、プラス思考で乗り切ってやる」
「歯垢は落としてからのほうがいいッスよ」
「言うと思った。よし。俺はこれから歯の治療に行くぞ。歯医者がなんだ。匂いが何だ。音が何だ。痛みが何だ」
「その心意気ッス。ちょいと歯を削って埋めるだけッスよ。たいしたことはありません」
「そうだな。むしろ削るのは大好きだ。スクラッチ式の宝くじとか。まあ宝くじの購入にあたり出費を重ねた金額の穴埋めはできてないが」
「類二さん。男前ッス」
「じゃあな。俺は行くが、お前はプログラム仕上げておけよ」
「わかりました」
「よし。では行って来る。歯医者なんか怖くない怖くない」
「いってらっしゃい」


次の日。

「あ。類二さん。おはようございます」
「・・・おう。おはよう」
「どうでした?」
「痛い」
「でも、もう大丈夫でしょう?」
「いや、痛い。現在進行形で痛い」
「え。歯医者に行ったのに」
「いや・・・実は、怖くて歯医者のドアを開けることができなかったのだ」
「ぷっ。ぶはははははは。これはおかしい。うひゃひゃははは。ひーひー。おーいちょっとみんな聞いてくれ。類二さんが」
「おいちょっと待て。黙れ」
「類二さんって、へっぽこッスねぇ。げらげらげら。これは黙らずにはいられません。わはははは。歯医者怖くて行けないでやんの(笑)」
「いいから黙れ」
「わかりました。黙ります。でも全社員に向けてメールを出しておきます。類二さん人気者になれますよ」
「そんなことで人気者になれるか。よくて笑い者、悪けりゃ除け者になってしまう」
「それにしても、歯が痛いと眠れなかったんじゃないスか」
「その通りだ。ほとんど眠れていない」
「歯医者で一時的に痛いのをおそれるあまり、一晩中じわじわと痛みを味わいつづけるなんて、並の人間には不可能ッスよ」
「そうだ。俺ほどの精神力を持った男でないと耐え抜くのは不可能だろう。俺は自分との戦いに勝ったのだ。歯医者という楽な方法ではなく、あえて茨の道に挑戦し、そして勝利したのだ」
「何スかその言い訳。悲しすぎッス」
「そうかな。お前にはできるか?できないだろう」
「できるわけないじゃないスか。そんな馬鹿なこと」
「そうだろうな。最近の若者は、耐えるということを知らないからな」
「ちょっとまってください。何か類二さんが偉いみたいな言い方ですけど、ひどく惨めッスよ。だいたい、まだ歯が痛いまんまじゃないスか」
「フン。何を言うか。もはや今となっては痛いのがデフォルトだ。痛くない状態が異常だと思えばよい。どうだ。俺はここまでの境地に達したぞ」
「・・・。じゃあ、ひとつ試してもいいッスか」
「何だ」
「ここにチョコレートがあります。これを今、痛いほうの歯で思いっきり噛んで食べてください」
「・・・俺を甘く見るなよ。甘いのは大好きだが」
「類二さんなら楽勝ッスよね。ではどうぞ」
「おうよ。見とけ。俺の生き様をっ」

その日、俺は会社を早退して歯医者に行き、一命を取り留めた。


(※)今後執筆予定
comments(4)
類二さんって、へっぽこぽこぽこッスねぇ。

私は小・中学生時代、歯を削られている最中に何故かフロッガー(ドラクエ掘砲箸寮鐺シーンを思い浮かべて耐えていました。

http://bbs.eek.jp/dq/g/i/frog.gif

私の脳内のフロッガー4匹はギラを何発お見舞いしてもビクともせず、残念ながら十数年を経た今でも決着がついていません。
私にとって彼らとの戦闘は、事実上のラストバトルです。
| スネ夫 | 2008/05/02 6:13 PM |
私の脳内フロッガーは毒攻撃ばかりしてきて、やはりギラがききません。ヒャドもだめです。
たぶんポイズントードと間違えています。
| 類二 | 2008/05/15 10:50 PM |
なんと逆にお金がもらえる風俗!!+.(・∀・).+♪ http://44m4.net/
| 聖子 | 2012/09/12 12:13 PM |
It’s the best time to make a few plans for the long run and it is time to be happy. I’ve learn this submit and if I may just I want to counsel you few interesting issues or suggestions. Maybe you can write subsequent articles referring to this article. I want to read more issues about it!
| Abigail | 2014/07/04 6:10 PM |










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