<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
PROFILE
↑メールなどはこちら

<近況>
2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENTS
LINKS
<< 9992年のゲーム・キッズ | main | 201号室の悶着 >>
父と息子
博士と助手

父「おお、息子よ。見てごらん、ほら、あんなところに博士と助手がいるよ」
子「わぁ、本当だ。博士と助手だー。すごーい、かっこいいー」
父「二人とも白衣を着ているからわかりやすいね。白髪のおじいさんの方が博士で、ひょろっとしたモヤシみたいなのが助手だろうね。おや、今ちょうど博士がフラスコを手にとって、なにやら慎重に薬品の調合を始めたよ。あの緑色の液体、モコモコと煙が出ているけど、あれが何かわかるかい?」
子「やくひんー? おくすりー? わかんなーい」
父「ははは、無知だなぁ、お前は。あれは透明人間になるための薬だよ。でもまだ実験段階らしい。どうやらあの博士は、助手を使って薬の効果を試そうとしているみたいだね」
子「すごーい! トーメーニンゲンー! 見たーい」
父「ははは、馬鹿だなぁ。透明人間は見ることができないからこそ透明人間なんじゃないか。見えてしまったら透明人間ではないよ」
子「やーだー、見ーたーいー、見ーたーいーのぉー」
父「まあまあ、ちょっと落ち着きなさい。それよりもほら、今、助手が必死の形相で博士に何か訴えているだろう? あれはきっと非人道的な人体実験に異を唱えているんだよ。試すならまず自分の体で試してみたらどうだともと言っているね。あの助手はこれまで何度も博士の危険な実験に付き合ってひどい目に遭わされてきたものだから、すっかりチャレンジ精神を失ってしまったのさ」
子「えー、トーメーニンゲンはぁー」
父「しかしもちろん博士はすごく偉い人だから助手の反逆なんか気にしないよ。そもそも自分で薬を試せるなら助手を雇う必要はないからね。見ていてごらん。ほら、やっぱり。助手はどうしても博士に逆らうことはできないんだ。かわいそうに。手柄は折半だなどとうまい言葉で丸め込まれた挙げ句、結局、鼻を摘まれて無理矢理薬を飲まされている」
子「やったぁー! なるの? なるの? トーメーニンゲンー!」
父「しっ! 静かに。ほら、今、助手の手足がぶるぶると震え始めた。もしこれが成功すれば、このあと少しずつ体の色素が抜けて薄ぼんやりとしてくるはずなのだが……」
子「うわぁー、すごーい。ドキドキ、ドキドキ」
父「おや? おかしいな。薬は即効性のはずなのに、助手はいつまでたってもケロッとした顔をしているぞ。うーん、これはどうやら失敗だったかな?」
子「ええー、なんでー、そんなのつまんないよー」
父「ははは、実験には失敗がつきものなのさ。失敗は成功の母と言ってね、何事もこうした失敗を繰り返すことで、少しずつ成功に近づいていくものなんだ。それにしても博士が未練がましく、早く消えてみせろといった顔で助手を睨みつけているのは面白いね。まるで根性でどうにかしろと言わんばかりだ」
子「あっ!」
父「うん? どうしたんだい、息子よ」
子「パパ、薄くなってる! 薄くなってるよー!」
父「ははは、馬鹿だなぁ。パパは薄くなんかならないよ」
子「違うよ、パパ。助手の右手が薄くなってるんだよー」
父「何だって? おおっ、本当だ。すごい。本当に薄くなっているじゃないか」
子「わー、すごい、助手すごーい」
父「いや、ちょっと待ちなさい。これはしかし……ああ、そうか、なるほど」
子「どーしたの、パパー?」
父「うん。やはり実験は失敗だったようだね。よく見てみなさい。確かに助手の体には少々の変化が現れ始めているが、あれは体が透明になっているのではなくて、皮膚の表面が薄い緑色になりかけているにすぎないんだ。ほら、さっき助手が飲まされた薬の色を思い出してごらん。あの薬は緑色をしていただろう?」
子「してたー」
父「そう。それが体内に吸収され、拡散して薄くなった。だからあの薬は最初から失敗作だったというわけさ。博士の失敗は、まず透明人間になるための薬の色を透明にしなかったことだね。功を焦るあまり、実に単純なことを見落としてしまう。人生ではよくあることだから、お前も気をつけなくちゃいけないぞ」
子「助手みどりー、みどりー、すごーい」
父「ははは。そうかそうか。まあ、実験は失敗してしまったが、お前が喜んでくれるならパパはそれだけで大満足だよ」
子「助手、みどりー、ずっとみどりー」
父「そうだね。あの助手はずっと緑だ。どうやらあの薬の効果は不可逆性のようだから。しかし、あの博士も案外頭が悪い。透明になる薬ではなく、体を緑色に変える薬としてならば大成功だというのに、そういう発想はないのだものな。まあ、なんにせよ、あんなふうにして博士と助手は毎日忙しく暮らしているんだよ」
子「ボク、あれ欲しー」
父「なんだい? 緑色になる薬が欲しいのかい?」
子「ぅんーん。そーじゃなくてー」
父「ああ、それじゃあ助手が欲しいんだね? それとも博士が欲しいのかな?」
子「両方!」
父「ははは。お前は欲張りだなぁ。でも博士と助手はセットだから当然だね。よし、わかった。任せなさない。パパがこれからすぐに買ってきてあげるよ」
子「わーい、やったぁー、だからパパってだぁーいすきー」



カップル

父「おお、息子よ。ちょっとあのレストランを見てごらん。奥の席で何やら真剣な顔を突き合わせている若いカップルがいるよ」
子「わぁ、本当だー。若いカップルだー。すごーい、かっこいいー」
父「水色のワンピースを着て目を伏せているのが女だね。ぎこちない新品のスーツでモジモジと怪しい動きをしているのが、これからプロポーズをしようとしている男だよ」
子「ええー、これからプロポーズするのぉー? ほんとにー?」
父「それはするさ。カップルなんだから。男は今、給料の三ヶ月分で購入したダイヤモンドの指輪をいつ懐から取り出そうかとタイミングを見計らっているところなんだ。しかし、息子よ。お前は何だか不満そうだね」
子「別に不満じゃないよ、パパ」
父「そうかい? それならパパはカップルに目を戻すよ。これから良いところなんだ。あ、今男がチラッと顔を起こして二人の目が合ったね。男はここぞとばかりに口を開いたけど、上手く本題に入れなくて、思わず天気の話なんかを始めてしまったよ。窓の外を見上げて苦笑している。これはいけないなぁ」
子「えー、どうしていけないのー?」
父「ははは、お前も案外子供だなぁ。いいかい、息子よ。カップルにとって天気の話なんていうのは、十年先のとなりの晩ご飯くらいどうでもいいことなんだ。特に今のあの二人の状況においては、天候で左右されるような要素は何一つとして存在しないのだからね。とりあえずの話題に明日の天気を持ち出してみたはいいが、すぐにネタが尽きて気まずい沈黙が訪れるよ」
子「あ、ほんとだ。二人とも急に黙り込んじゃった。パパ、すごいや」
父「まあね。そもそも天気の話はこれでもう六度目だからね、数分とはいえ、むしろよく会話を成立させたとパパはあの男を褒めてあげたいくらいだよ」
子「ふぅん、そっかー。天気の話ってなかなか深くは広がらないものなんだね」
父「そうだよ。それどころかほら、見てみなさい。女は度重なる天気の話にすっかりむくれてしまってすごい形相だ。きっと男がプロポーズしようとしていることは薄々悟っているのだろうね。それを男がなかなか切り出してこないものだから、焦れったさのあまり次第に対応がぞんざいになってきているんだよ。わかるかい?」
子「うん。なんだか風船みたいにふくれてる。鍵盤でも叩いてるみたいにテーブルの上で指をせかせか動かしてるよ」
父「そう。さすが我が息子。よく気がついたね。あれはもう末期症状だよ」
子「えー、そんなー、だいじょうぶなのー? 男、だいじょうぶー」
父「大丈夫ではないさ。おそらく、あの男にはまだいくらか迷いがあるんだな。それが今一歩プロポーズに踏み切れない理由だろう。しかし、あの男も男だ。一度腹を括ればきっと──」
子「あっ!」
父「どうしたんだい、息子よ」
子「急に男が立ち上がったよ、何だかすごくびっくりした顔で入り口の方を見てる」
父「うん?」
子「あっ、女もつられて振り返った!」
父「おっと、これはこれは……なるほど。そうきたか」
子「えー、なにー、どういうことなのパパー」
父「うん。説明してあげよう。今、入り口の方から、妙に化粧の濃い別の女が近づいてきているけど、見えるかい?」
子「えー、どこー?」
父「ほら、もうカップルのテーブルまでやって来た」
子「あ、わかった。あのギラギラの女だね?」
父「そう。あのギラギラでヒラヒラの女だ。どうやら男は二股をかけていたようだね」
子「フタマター?」
父「そうだよ。二股というのはね──あっ、いけない。そうこうしているうちに二人目の女がいきなり男に強烈なビンタをかましたぞ。男は無言で堪えているが、これは大変だ」
子「えー、なんなのー、よくわからないよー」
父「いいから、黙って見ておきなさい。最初の女が二人目の女に詰め寄って何やら激しい口調で言い連ねていたが、やがて男に向き直ってボロボロと大粒の涙を流し始めただろう? これを修羅場というんだよ」
子「うわぁー、しゅらばー、しゅらばー! すごーい! かっこいいー!」
父「そうだろう、そうだろう」
子「ねえ、パパ。ボクあれ欲しー、あれ買ってー!」
父「ははは。まったく、お前と来たらすぐそれだ。やっぱり全部セットで欲しいのかい?」
子「ぅんーん。男はいらないー」
父「ははは。そうかそうか。それにはパパも賛成だな。よし、わかった。任せなさい。パパがこれからすぐに買ってきてあげるよ」
子「わーい、やったぁー、だからパパってだぁーいすきー」


テリーマン

父「おお、息子よ。見てごらん、ほら、あんなとろでテリーマンがザ・摩雲天と戦っているよ」
子「わぁ、本当だ。摩雲天だ。すごーい、かっこいいー」
父「なんだい、テリーマンじゃないのかい?」
子「テリーマンもかっこいいよー」
父「そうだね。おでこに米と書いてあるのがテリーマンだよ。柔道着を着ている方が摩雲天だ。悪魔超人というだけあって、なかなか悪そうな顔をしているね」
子「あっ、なんだかテリーマンがピンチだよー!」
父「うん、今ちょうど摩雲天のマウンテン・ドロップをもろに食らって絶体絶命になっているところだ。でもテリーマンは簡単にはやられないよ。彼はテキサス出身の超人で、日本には出稼ぎに来ているんだ。生粋の愛国主義者で熱血漢だけど、持ち技は案外地味なものが多いから、どの試合もいまひとつ盛り上がりに欠けて今後の活躍にはちょと不安が残ると言わざるを得ないね」
子「うん。でも、テリーはすっごく物知りなんだよ」
父「そうそう、よく知っているね。そういえば聞いたことがある、ってやつだろう? ははは、お前だってなかなか物知りじゃないか。でも、知識量と実戦での戦闘能力は必ずしもイコールではないんだよ。彼はのちに超人参謀になるけど、その知識は結構いい加減なこともあるから注意しないとね」
子「あ、見て見てパパー、テリーマンが急にブチ切れて何かを声高に叫んでいるよ?」
父「ああ、それはきっと摩雲天がキン肉マンやミート君を愚弄するような発言をしたからさ。テリーはそれですっかり頭に血が上ってしまったんだ。仲間を馬鹿にされるのは、彼にとって一番許せないことだからね。友情パワーというんだよ。もうすぐ怒りのブレーン・バスターが炸裂して逆転勝利するんじゃないかな」
子「ええー、摩雲天負けちゃうのー?」
父「なんだい、やっぱり摩雲天びいきかい? でもそれは仕方がないさ。摩雲天はテリーマンが独力で勝利した数少ない超人だからね。もしここで負けてしまうと、生涯の通算でも負け越しになってしまうんだよ」
子「ふぅーん、そうなんだー」
父「だからテリーマンも必死になろうというものさ。ところで、このときテリーマンは左足を失っていて義足で出場しているんだけど、知っていたかい?」
子「ええっ!? そうだったのー? 知らなかったー。でも全然そんなふうには見えないよー」
父「まあ、そろそろみんなも忘れかけているころだからね。案外、本人も無自覚なのかも知れないな。あ、そんなことを言っているうちに、テリーがブレーン・バスターを仕掛けたよ」
子「ああっ、ホントだ! 摩雲天がー!」
父「うん。これで正義超人チームは貴重な勝利を手に入れたわけだ。一連のこの試合にはバラバラにされたミート君の体の一部がかかっているものだから、彼らもそう簡単に負けるわけにはいかないんだよ」
子「ねぇパパ、ボクあれ欲しいよー」
父「なんだい、摩雲天が欲しいのかい? でも摩雲天はもう谷底だよ?」
子「違うよー、ボクが欲しいのはあっちだよー」
父「おやおや、これは驚いた。お前も案外物好きだね。そんなにテリーマンが欲しいのかい?」
子「ぅんーん、そうじゃなくてー、テリーマンのあれー」
父「うん? ああ、なるほど。あれというとテリーマンの肩についているあれのことだね?」
子「欲ーしーいー、あれ欲ーしーいー」
父「ははは。なかなか良いところに目をつけたな。あれはスターエンブレムといって、テリーマンの愛国心の象徴であると同時に超人の証でもあるんだ。もちろん着脱可能で一度はアシュラマンに奪われたこともあるけれど、でもあれを取られてしまうと、テリーマンはもう超人ではなくなってしまうんだよ? それでもいいのかい?」
子「欲ーしーいー、あれが欲ーしーいーのぉー」
父「ははは、お前は本当に我がままだなぁ。でもよし、わかった。パパに任せなさい。これからすぐにテリーマンと交渉して買ってきてあげよう」
子「わーい、やったぁー、だからパパってだぁーいすきー」


父と息子

父「おお、息子よ。見てごらん、ほら、あんなところに父と息子がいるよ」
子「わぁ、本当だ。父と息子だー、すごーい、かっこいいー」
父「ははは。どうやらあの父と息子はお金で買えないものはないと思い込んでいるようだね。さっきからすごい勢いで無駄遣いをしている。でも、いいかい、息子よ。よく覚えておいて欲しいのだけれど、世の中にはお金では買うことのできない大切なモノがあるんだよ。お金なんていうのは、結局それ自体に価値のあるモノではないのだからね。きっとあの父と息子も、やがてひょんなことから本当に大切なモノの存在に気がついて、これまでの自分たちが如何に傲慢だったかを思い知るんだろうね」
父「うん。知ってるー。でもボク、あの父と息子も欲しいなぁー」
子「ははは。そうかそうか。よしよしわかった、任せなさい。パパが今すぐに買ってきてあげるよ」
子「わーい、やったぁー、だからパパってだぁーいすきー」
comments(0)










このページの先頭へ