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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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トゲゾーについて考える
トゲゾーについて考える。

トゲゾーといえば、スーパーマリオブラザーズシリーズに出現するお馴染みの敵キャラクターで、甲羅にトゲを持つ亀の一種であるが、その生態についてはあまりよく知られていない。
多少知識のある者でも、せいぜいが、
「甲羅にトゲがあるので踏みつけることができない」
「踏みつけるとトゲが刺さって逆にダメージを受ける」
「トゲゾーの卵はパイポと呼ばれる」
といった程度の認識であろう。
なるほど、名は体を表すとはよく言ったもので、確かにトゲゾーの一番の特徴はその甲羅に生えた見事なトゲだ。トゲがなければただの亀である。しかも、これが二足歩行もできなければ靴も履いていない亀だから、ただの亀といっても、トゲのないトゲゾーなどは羽を失ったパタパタにも劣る。
トゲゾーはトゲあってこそのトゲゾーだ。
しかし、トゲゾーを単純にトゲだけの存在と決めつけてしまって良いものか。
──否。私にはとてもそうは思えない。
甲羅にトゲが生えているから「トゲゾー」というのでは、あまりにお粗末な生き物であるし、もし「トゲがあるからトゲゾー」とするなら、パタパタは「ハネがあるからハネゾー」でなければならぬ。よしんばハネゾーを否、パタパタを是としたところで、トゲゾーは「トゲトゲ」であるべきだろう。いや、あるべきだ。
いずれにせよ、お粗末な生き物ではある。
今日はそんなトゲゾーにスポットを当てて、その知られざる一生に思いを巡らせてみようと思う。

すでによく知られた事実だが、トゲゾーは亀の仲間である。ミドリガメ、クサガメ、イシガメ、スッポン、ノコノコ、メット、クッパ、コクッパなどの仲間だ。
亀は爬虫類であるから、一般に地上生活に適した体制を持ち、変温性で、空気を呼吸し、卵生である。卵生とはすなわち、卵の形のままで母体外に産み出され、体外で発育して孵るもののことである。トゲゾーとて例外ではない。
トゲゾーの卵はパイポと呼ばれる。これは殻の表面にトゲを生やした特異な形状をしており、一見すると卵には見えないが、逆に卵だとわかってしまえば、もうトゲゾー以外の生物の卵には見えない。パイポには赤いものと緑のものとがあり、赤は受精卵、緑は未受精卵である。
パイポはジュゲムという別の生き物によって様々な土地に運ばれ、地上数十メートルの高さから次々に投下される。半ば強制的にではあるが、このとき、地面に叩きつけられた強い衝撃によってトゲゾーの孵化が促されるのである。

今、一匹のジュゲムが悠然と大空を移動している。
大気は澄みわたり、太陽は限りなく眩しいが、見下ろす大地には荒涼たるキノコの原野が広がっている。
ロシナンテに跨ったドン・キホーテよろしく、笑顔を絶やさぬ雲に乗っかって気儘な空中遊泳を楽しんでいたジュゲムは、ふと何処からか発せられた甲高い鳴き声を聞きつけて、ピクリとその小さな耳を動かした。
風に揺れるキノコ。宙吊りにされたリフト。
何か、ただならぬ気配……。
雲からほんの僅かに頭を覗かせ、きょろきょろと様子を窺うジュゲム。
目を凝らしてみると、地平線の遥か彼方から、こちらに向かって凄い勢いで疾走してくる小型の生き物がいた。
大きな団子っ鼻にピンと反り返った見事なヒゲ。
──オスのマリオである。
おそらく群れからはぐれてしまったのだろう。そのマリオは「ヒァウィゴー」「ヤッフゥー」「マンマミ〜ァ」などと、仲間を探し求めるように悲しげな声を発しつつ、次々にキノコの笠を飛び移って、むやみやたらに跳ね回っている。
「ヒァウィゴー……」
しかし、付近に仲間のマリオは見当たらない。見ればまだ躯の小さいマリオで、子供ではないのだが、どうやらまだキノコを食べていないらしい。
思わぬ場所で大好物を発見したジュゲムは、勢いよく雲から頭を突き出すと、まっしぐらにマリオのいる場所を目指して雲を駆った。その動きは俊敏かつ滑らか。
すいすいと大空を渡る様は、さながら赤兎に跨った関羽の如しである。
登り詰めたキノコの上でコインブロックを見つけ、ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ね続けているマリオは、未だ天敵の接近に気づいていない。
音もなくマリオの頭上に忍び寄ったジュゲムは、雲の中に腕を伸ばすと、そこからトゲの生えたボールのようなものを取り出し、それをおもむろにマリオに向けて放り投げた。
ポイポイポイ──と、ひとつ、ふたつ、みっつ。
それは大きく優雅な放物線を描いて次々とマリオの周囲に落下する。
着地と同時に、孵化。
──そう。
このトゲの生えたボールのようなもの。
これこそがまさにパイポと呼ばれるトゲゾーの卵なのである。

トゲゾーの一生はその始まりからして、すでに過酷だ。
先にも述べたが、ジュゲムはトゲゾーとは別の種類の生き物であって、トゲゾーの親でもなければ兄弟でもない。鳥類の中にはカッコーのように、自分とは別の種類の鳥の巣に卵を産みつけ、巣の持ち主に自分の雛を育てさせる「託卵」という習性を持つものもあるが、トゲゾーは爬虫類であり、亀の仲間であるから、トゲゾーとジュゲムの関係は、カッコーとオオヨシキリのそれとは完全に異なる。
どちらかといえば花粉と昆虫の関係に近いのだろう。が、ジュゲムはパイポを狩りの道具に利用するという点が非常に風変わりであり、大変に興味深い。
ジュゲムには拾ってきたパイポを雲の中に大量に蓄えておく習性がある。今ご覧頂いた通り、これを爆弾のように投げつけることで、大好物のマリオを仕留めるのだ。
トゲゾーにしてみれば良い迷惑である。しかし、この厳しい野性の洗礼を受けずして、トゲゾーの誕生はあり得ない。

さて、先ほどジュゲムによって放り投げられたパイポから、たった今、一匹のトゲゾーが生まれた。この生まれたばかりのトゲゾーをジョアンと名付けよう。右の前肢がやや短いのが特徴の、愛くるしいオスのトゲゾーだ。
地面に激突した衝撃によって孵化したジョアンは、初めて目にする外の世界に戸惑った様子もなく、すでにトゲの生え揃った頑丈な甲羅から、にょきっと頭と手足を伸ばし出すと、すっくと短い四つ足で立ち上がり、産声のひとつも上げないまま、いきなり、かなりの速度で歩き始めた。
亀のよちよち歩き、というのではない。
まだ生まれたばかりだというのに、その刺々しい姿は年長のトゲゾーと少しも変わらず、その表情からは些かの感情も読み取れない。冷血──という言葉さえ自然に連想させるほど頑なな無表情、研ぎ澄まされた野性の形象。他のトゲゾーにしても、これは変わらない。
キノコの地面を踏みしだき、ジョアンは真っ直ぐにマリオを目指して突き進む。
誰に教えられたわけでもないのに、生まれたばかりのウミガメの子供が海を目指して歩き出すのと同じように、生まれたばかりのトゲゾーはまず近くのマリオを目指すのである。幸い付近に障害物はなく、その歩みは順調だ。
と、そのとき。
不意にジョアンの頭上を黒い物体が掠めた。
──危ない!
しかし、間一髪のところで直撃を交わすジョアン。見るとそれはパイポで、パイポが続々と上空から降り注いでくるではないか。地面にぶつかったパイポからは次々と新たなトゲゾーが孵化している。
執拗にマリオを追い回すジュゲムが見境なしにパイポを放り投げているのだ。
気がつけば、地上はすっかりトゲゾーだらけになっていた。もちろんジュゲムの標的はマリオなのだが、だからといって地面を這い回るトゲゾーたちに気を遣ってくれるような優しいジュゲムではない。ジュゲムは親ではないし、トゲゾーを仲間とも認識していないのだ。地上にいる限り、危険はどこまでも付きまとう。
如何に頑丈な甲羅を持つジョアンといえども、遥か上空から高速で投下されるパイポの直撃を食らえば、甲羅が砕けてひとたまりもかっただろう。
もし突然の攻撃に驚いて歩みを止めていたら……。
ほっと胸をなで下ろすジョアン。しかし、ジュゲムは攻撃の手を緩めない。地上はまさに空爆を受ける戦地さながら。加えて一箇所にあまりにも多くのトゲゾーが密集したため、全体的に動きが鈍くなっている。マリオの滞空時間も異様に長い。
しかし、ジョアンには関係なかった。今のジョアンはマリオを目指してただひたすらに前進あるのみである。マリオと接触してどうしたいのか、どうなるのか、実はジョアンにもよくわかっていない。
生まれたばかりだから、というのではなく、どれほど歳を重ねたトゲゾーにもそれはわからないのだろう。それがわかるのは、おそらく──。
本能に刻まれた己の目的を達成したときのみ。

それからしばらくジョアンが前進を続けていると、窮地に陥ったマリオが不意に思い切った行動に出た。ぴょんぴょんとキノコの笠を渡り歩いてより高い位置へと移動していく。どうやらこのマリオ、果敢にも事態の元凶であるジュゲムを追い払おうと決めたらしい。
マリオはただ逃げ回るだけの弱い生き物ではない。マリオの中でも小型のマリオは特別な攻撃手段を持たず、耐久力も極めて低いが、その跳躍力には目を瞠るものがある。気性も荒い。詳しいことはわかっていないが、時には自分の躯の数倍はあろうかという大きなクッパを打ち負かすこともあるというのだから、侮れない。
高みに登り詰めたマリオは、「ヒァウィゴー」と雄叫びを上げて加速、勢いよく向こうの大地にジャンプした。
しつこく追い縋るジュゲム。
しかし、ジョアンには関係がなかった。
高低差を利用されてはもう手の出しようがない。
あのマリオはもう諦めるしかないだろう。
ジョアンを含む大量のトゲゾーたちは下段のステージに取り残された。
今、その目の前に切り立った深い崖が迫っている……。

季節は巡って──春。
トゲゾーたちにとっては恋の季節がやって来た。王国のあちこちで独り身のオスのトゲゾーたちが、数の少ないメスを巡って激しくトゲを突き合わせている。
一方、キノコの原野の片隅、地面に置かれたブロックとブロックの僅かな隙間に、一匹のオスのトゲゾーが挟まっていた。どうしてもその隙間から抜け出すことができず、ウロウロと忙しなく身体の向きを変えている。
このトゲゾー、よく見れば右の前肢がいくらか短い。
──ジョアンである。
いったいどうしてそんな所に挟まってしまったのか。
カップルになった他のトゲゾーたちが、せっせと巣作りに励むさなか、隙間に挟まったジョアンは一人寂しく藻掻いている。
藻掻いても藻掻いても、狭い隙間から抜け出せない。
壁にぶつかり、壁にぶつかり、あまりに激しく方向を転じるので、残像で姿がおかしな具合になっている。もう、どちらが頭なのかわからない。
──と、そんなジョアンを嘲笑うかのように、そのブロックの上をBダッシュで駆け抜けていった小型の生き物がある。
大きな団子っ鼻にピンと反り返った見事なヒゲ。
ルイージ──マリオによく似た容姿を持ちながら、立場上、諸事情あって、今は希少とされているマリオの亜種である。
しかし、ジョアンはルイージの存在に気づくことがなかった。
ルイージの方でもまた、ジョアンの存在に気づくことはなかった。
トゲゾーはそのトゲ故に、小型のマリオ、ルイージに対しては無敵である。
うっかり触れようものなら、マリオもルイージも即死である。
けれどそれが災いしてか、トゲゾーは無視されることがほとんどなのだ。
この隙間に挟まって早半年。
もうどれだけのマリオをやり過ごしたことか──。

──冬。
ジョアンには最期の時が迫っていた。
結局、ジョアンはあの狭いブロックの隙間から抜け出すことができなかった。
最近になってわかってきたことだが、実は子孫を残すことのできるトゲゾーというのは極めて稀な存在なのである。多くの場合が孵化後間もなく転落死するか溺死するかしてしまい、どうにか生き延びた者たちにしても、そのほとんどがジョアンと同じような運命を辿ることになる。
谷底に落ちるか、海に落ちるか、ブロックの隙間に挟まるか……。
実際、今ジョアンのいるブロックの隙間にも、かなりの数のトゲゾーが挟まっている。一見しただけでは分かり難いが、優に二十匹はいるだろう。
重なっているのだ。
その証拠に動きが鈍い。

今、死にゆくジョアンの遥か頭上を、年老いた一匹のジュゲムが通り越していった。
パイポだった頃、ジョアンを放り投げたあのジュゲムだ。
ジュゲムは何処からかパイポを見つけて拾ってくる。
その雲の中には、きっと大量のパイポが詰まっている。
パイポ。新しい命。新しいトゲゾーの卵たち。
いつの日か──。
ジュゲムがマリオかルイージを見つけたとき。
そこでジョアンの分身が生まれるに違いない。
パイポとジュゲムとマリオとルイージ。
ジョアンは甲羅の中に閉じ籠もり、ゆっくりとまぶたを閉じていった。
こうしてトゲゾーたちは延々と次の生命を紡いでゆく。

いずれにせよ、お粗末な生き物ではある。
comments(7)
思わず、読みふけっていました。

ネタだとしてもこういう長文を書ける人がうらやましいです・・・OTL
| yk | 2006/10/20 10:31 PM |
ジョアーン(泣)
| スネ夫 | 2006/10/21 10:24 AM |
(泣き)
| ななか | 2006/10/22 8:33 AM |
いつもこんなわけのわからんネタに付き合ってくれてありがとう
おいら嬉しいや

>yk
ぱくってもいいのよ

>スネ夫
ジョアンは死んでいません。彼の魂は、別の個体に移っただけなのです

>ななか
そしていつか、ジョアンはきっと、宿敵マリオをやっつけることができるでしょう
| 類二 | 2006/10/23 11:08 PM |
I value the article post.Thanks Again. Will read on…
| Riley | 2014/02/20 12:23 PM |
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| LR200812 | 2014/02/23 9:36 PM |
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| Nevaeh | 2014/03/19 4:24 PM |










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