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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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電車の中で妙な体験をした
先日、電車の中で妙な体験をした。

満員電車。
椅子に座ることができなかった俺は、席が空くのをねらって、すぐ降りていきそうなおっさんの前に陣取っていた。
本を読みながら立っていると、なんだかスネの辺りに違和感がある。
モゾモゾするのだ。
車内はすし詰め状態だったから、前にいるおっさんの足でもあたっているのだろうと思って、足を見たが特にそういうこともない。
おっさんは足を引っ込めていて、接触さえしていない。
チラチラ足元を見るのもおかしいので、錯覚だろうと言い聞かし、しばらく我慢していたが、モゾモゾ感は消えるどころか増していくばかり。
読書に集中できないので、とても不愉快だった。

ふと、嫌な考えがよぎった。
虫が入り込んだのかもしれない。
小さなアリのような虫がズボンの裾から侵入し、モゾモゾと移動していく。
そう考えると、もうそれ以外にないような気がしてくるから不思議だ。
神経を足に集中してみると、やはり何か動いているような気がする。
そして、スネの辺りでモゾモゾとしていたそれは、
少しずつ少しずつ、ヒザの方へと移動していくようだった。
とてもくすぐったかったが、
満員の電車内では身動きをとることさえ困難である。
わずかに足を浮かせたりする程度が精一杯なのだ。
本当なら、すぐにでもズボンをバサバサやりたいところだったが、
それもできないから、せめて虫の正確な位置を把握するために、
ざっとズボンを撫でてみたかった。
いや、よく考えてみれば下手に刺激するのは良くないのかもしれない。
ハチなどの危険生物の可能性もないわけではないし、考えたくはないが、芋虫のような半液体状の生物という場合もある。
むやみに叩きつぶす等の行為は危険、いや厳禁といえる。
しかし、あまり深く侵入されては、排除が困難にもなる。
しばらく待てば勝手にズボンから出ていくかもしれない。
そんなことを考えながら、動くに動けず躊躇していると、それはだんだんと上に移動し、ついに太股の辺りまでやってきたのである。

ヤバイぞ!これは危険だ!排除できなくなる!
そう感じた瞬間、
手が、勝手に動いて太股を叩いていた。
これはもう本能的な動作である。もはや制御不能。
後悔先に立たずとはいえ、打算など完全に超越した行為だった。
───つぶしたか?
戒めをあっさりと破った故の不安。
ところが不思議なことに、足にも手にもそういった感覚がまるでない。
つり革があると思って手を伸ばした先に何もなく、虚しく空をつかんだ瞬間の感覚に近い。
肩すかしである。
やはり気のせいだったのか?
もともと虫などいなかったのか?
直後、周囲に異変を感じた。

反射的な防衛行動が、周辺乗客の注目を集めてしまったのである。
彼らは、俺がどんな状況にあるのかまるで理解がないから、突然太股をを叩いた男に少なからず不審を抱いたのであろう。
或いは、少し腰をかがめたのが良くなかったか。
乗客達は怪訝そうに見ていたが、
こちらもそれどころではなかったのだから仕方がない。
ズボンに虫が侵入して、誰がそれを放っておけるというのか。
俺は何ごともなかったかのように本を読み続けた。
しかし、不思議なのは足の違和感である。
虫ではなかった。
太股を叩いたついでに、ヒザの辺りまで撫で回してみたのだが、
異物の存在は感じ取れなかった。
そればかりか、今度は複数箇所、モモの後ろ側にも違和感がある。

ためらわず、後ろを見た。
するとそこにはサラリーマン風の男がスーツケースを持って立っていた。
それがあたっていたのか。
半ば確信したが、よく観察してみると何かおかしい。
確かに、ときどきスーツケースが触れることはあったが、
それは今までのモゾモゾ感とは別の刺激である。
それに、スネ・フロントの違和感の説明も付かない。

いろいろと思案した結果、俺はとんでもない考えに至った。

後ろの男のスーツケースには、
何か、電磁波を発生させるような装置が組み込まれているのだ。
或いは静電気か。
足の違和感は、虫が這っているような感覚というよりも、むしろ、よく擦ったプラスチックの下敷きを皮膚に近づけたときの感覚に近い。
モゾモゾピリピリする感じだ。
そう思うと、もうそれしかないと思えてくるから不思議だ。
どういうつもりか知らないが、スーツケースの男はそんなことをして人を困らせて喜んでいるのだ。
なんとくだらないヤツ!
いくら何でもそれは無理がある、とも思ったので、よくわからないが、とにかく俺の足下には特殊な状況が発生しているのだ、イライラしたオヤジ達が作り出す超絶空間だ、そうかもしれない、と、そう思って納得することにした。
納得できれば何でも良かろう。
どうせ納得したところで状況は何も変わらないのだ。
ああ、かゆい。
掻きむしりたい。
ズボンをバサバサやりたい。

しばらくすると目の前の席が空いたので座った。
すると不思議なことに、足のかゆみはピタリとやんだ。
なので、とても読書に集中することができた。
もしかすると、読書に集中できたから、かゆみが治まったのかもしれない。


この話、メールに書かなかったらすぐ忘れてしまう種類の体験だった。
記録を残したことで、しばらくは記憶に残るだろう。
最近、こういった過程を踏まないと忘れてしまうような出来事が多い。
世の中の印象的出来事の発生率が、絶対的に少なくなったせいだろう。
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生命体
宇宙人など、地球にしかいないだろうと俺は思うのだが、仮に、どこか遠くの星に生命体がいたとしよう。
地球からは何億光年も離れている惑星だ。
普通にやってたら、地球に来るために何世代もかけなければならない。
光の速さでも何億年もかかるし、そもそも光より速く動くことはできない。
膨大なエネルギーを使って、限りなく光速に近い速度で来たとしても、来ただけでは目的の半分しか達成してないわけだから、やはり帰らなければなるまい。
すると、来たときと同じ時間とエネルギーが更に必要なわけで、そこまでして地球に来るメリットがどこにあるのか?
というような理由で、友人にほぼ納得して頂いたような気がする。

が、それを少しだけ訂正しなければならないことに気がついた。
宇宙人の科学力がとんでもないことになっていて、光速は超えないにしても、それに近い速度で移動できる宇宙船があった場合。
宇宙船の乗組員は、生きたまま地球に来られる。
何億年もかける必要はない。
なぜなら、運動している物体の時間は、運動していない物体の時間よりもゆっくりと流れるからだ。(ウラシマ現象というヤツですな)
地球から見れば、何億年も前に出発した宇宙人船が、ようやく今頃になって到着したことになるわけだが、乗組員達の時間の流れはゆっくりになっているので、生きたまま地球に到着できるだろうし、母星に帰ってもまだ生きていられる。
こうなると、移動に時間がかかりすぎるから、というのではちょっと理由として弱い。
それでも、母星に帰った乗組員は、既に滅亡している我が文明を見て、さぞガッカリすることだろう。
宇宙人の母性でも、やはり時間は普通に流れているので、往復した分、地球よりもさらに時間が経ってしまっている。
下手に何往復もしようものなら、母星が超新星爆発に巻き込まれるところを見ることができるかもしれない。

それはそれとして、宇宙人の目的が移民だった場合は、母星のことは気にしなくても良くなる。
あまり良い状況ではないので、ちょっと考えてみる。
移民あるいは亡命を目的として来るのであれば、おそらく、奴らは地球のことを知ってなければならない。
あるかないかもわからない星に、移民も亡命もない。
しかし、地球を知っているという事は、何らかの手段でその情報が、地球と宇宙人星間との距離を移動した、ということになる。
直接の行き来ではなく、伝聞や通信だったとしても、情報伝達というのは結局、物理的手段に頼るほかないから、それならば、その速度は光速より遅い。

ということは、
その距離ゆえにやはり膨大な時間がかかっているはずである。
遠くの星の宇宙人が地球の情報を得るためには、何億年もかけなければならず、そうして得た情報というのは、何億年も前の情報なのである。
だいたい、文明の寿命がいくら長くとも、何億年も続くものではないだろう。
ゆえに、宇宙人が地球人類の情報を手に入れる可能性は、きわめて低いと言える。
これでは移民する意志など生まれるはずがない。

最後の問題は、漂流の場合だ。
母星が滅亡する直前に、何とか脱出した宇宙人が、行く当てもなく宇宙を漂流しているうちに、偶然にも地球まで来てしまったという状況。
これなら、まあ、あっても良いかも知れない。
けれど、そんな危機に瀕している宇宙人が、地球人に対して横暴な振る舞いができるだろうか。
助けを求めてやってきたのに、戦争を仕掛ける馬鹿もいまい。
こそこそ隠れていたんでは、助けられるものも助けられないというものだ。

ワープとか超光速宇宙船とか、超科学的なものを仮定してしまうと、よくわからないぶん不利になるので、ここでは触れない。
太陽系内に宇宙人がいるというのもナシよ。

韓国、また勝ってた。
宇宙人よりサッカーか。
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すべてを知る者と猫の話をしよう
すべてを知る者と猫の話をしよう。


昔。
「ある瞬間における、宇宙に存在するすべての原子の位置と
速さを知ることができれば、それを解析することによって、
宇宙の現在過去未来、あらゆることを知ることができるだろう」
と、そんなことを言ったラプラスという数学者がいた。

後に、「すべてを知ることのできる存在、
もしくはそのことによって、運命を操れる存在」を
ラプラスの悪魔と呼ぶようになった。
FF5に「すべてを知る者」という敵がいたが、果たしてヤツはラプラスの悪魔だろうか。

現在過去は良いとして、未来がわかるとはどういうことか。
ボーリングをしてるところを考えてみる。
球を投げた瞬間、ピンが何本倒れるかはまだわからない。
しかし、玉の重さや速さ、位置、床の状態などがわかれば、それらから計算して、ピンが何本倒れるかを予測できる。
あらゆるデータが完璧であれば、予測ではなく確定が可能になる。
天気予報にしても、原子レベルで宇宙を認識していれば、100%の予測が可能なのかもしれない。
いや、100%の予測というのは、既に定まった未来だから、運命ということになるのか。
ラプラスの悪魔(あるいはすべてを知る者)にとっては、この世は始まりから終わりまですべて定まっており、かつ自身はそれを全部知っている、ということになる。
一つの宇宙の状態(どこに何があるのか)を把握することにより、そこからあらゆる法則を導き出し、結果、未来までも確定する。
これが、ラプラスの悪魔が未来を知っている理由になる。

さて、この世で起こる現象というのは、何から何まで物理現象である。
幽霊や宇宙人の科学やら、現在の物理学では説明の付かない怪しげな輩もあるにはあるが、それは現時点で説明がつけられていないというだけで、完全永久に説明不可能というわけではないし、説明不能だから物理現象ではない、なんてことはない。
そもそも、「この世の現象を全て物理的にとらえよう」
というのが物理学の根本なのだから、その見地に立てば、物理法則からはみ出した存在などありえない。
「この世で起こること全てを物理現象と定義する」と言い換えてもいい。
説明が付かないから物理現象ではないというのでは、物理学の存在する意味がないではないか。

ともかく、この世の物質はみんな原子からできている。
世の中の現象は、原子の複雑な相互作用によって発生する。
だから、法則と数値がわかっていれば、いかなる予測もできるはず。
予測できれば操作も可能なはずで、そうなったら楽しいから、みんな頑張った。
今のところ、知るべき要素が多すぎて現実的には不可能なんだが、(ボーリングの完全予測をするためには、初速度、空気抵抗はもちろん、玉周辺空間の原子配置から、室内、ひいては地球、宇宙規模の原子の配置まで全て正確に確認しなければならない)
ラプラスの悪魔というのは、こういうのを全てクリアした存在なわけだ。
今は無理でも、理論的には間違っていないから、物理学の究極には、こういう存在も求められることになる。
宇宙の原子配置まで含めてすべてを知る者ならば、運命を操ることも可能なのだ。これはもう神様。超越者。

ところが、ところがである。

「すべてを知る者」は、バッツ達に倒されてしまった!!リターンには苦戦したけれど、あっさりと・・・これは何故か?
そこには大きな落とし穴があったのだ。
不確定性の穴である。

シュレーディンガーの猫を持ち出すことにしよう。

密閉された部屋がある。
この部屋には、奇妙なハコがあり、それは部屋に誰か入ると、その五分後に、50%の確率で毒ガスを噴出するという、わけのわからない装置だ。
この毒ガスは強力で、猫など一発で死んでしまう。
さて、この部屋に猫を一匹送り込んで閉じこめてみる。
5分後、猫はどうなっているか。
部屋の中を見ないで考えてみよう。

すべてを知る者でない我々が予測するに、猫は生きているか死んでいるかどちらかである。
ドアを開けてみないことにはわからないが、
「部屋の中の猫は、生きているか死んでいるかいずれかの状態」
それしかないと考える。
ところが、物理学(量子力学の分野になるが)では、この確認されていない部屋の中の猫の状態を、
「生きている確率50%、死んでいる確率50%の状態」として、
そのまま確率で扱う。
これは、猫は生きているのでも死んでいるのでもなく、
「生きている状態と死んでいる状態が重なった状態」
という何ともわけのわからない状態である。
猫は、生きてもいるし、同時に死んでもいることになる。
この状態は、誰かが観察した瞬間に、生きている状態か死んでいる状態かのいずれかに100%確定する。

結局、猫の生死は誰かが確認することによってしかわからない。
正確にはドアを開けて猫を観察したときに初めてその結果が確定する。
さらに言い換えれば、物の存在はそれを確認したときに初めて決まる、ということになる。
当たり前といえば当たり前なのだが、すべてを知る者は、それを知らなかったのかも知れない。

シュレーディンガーの猫を持ち出すまでもなく、物事は観察されるまでは不確定である。
また、観察する行為自体が対象の性質を変化させる。
見るという行為は、対象に光が当たっている状態を観察しているわけだから、そうでない状態というのは、見ることができない。
教師が見ているところでは、生徒の態度が変わってしまうようなものだ。
猫にしても、原子にしても、観察されていない状態を知ることは、人間には不可能。
物理的に存在している時点で、人間はラプラスの悪魔にはなれない。
対象物に影響を与えずに観察することができるのは、物理法則にとらわれない超越的客観だけであり、それこそがラプラスの悪魔なのだろう。
少なくとも、人間が見て触れるような存在ではない。
肉体があるなどもってのほか。

さてさて。「すべてを知る者」である。
結論を出すまでもないが、あれは違う。
「すべてを知る者」は、バッツ達と同じ世界に存在していた。
体もあった。そればかりか、ものすごく干渉してくる。
(物理的に)世界に干渉できる存在は、ラプラスの悪魔ではありえない。

ということは、ラプラスの悪魔がいくら何を知っていても、それで何かできるわけでもないと、そういうことになる。
これは、神様も同じだね。
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愛は光の果てに
Yは不安だった。
水曜の午後、職場の付近でSを見かけたからだ。
いや、見かけたから不安になったわけではない。
同じ街に住んでいるのだから、
ばったり出くわすことは、そう珍しいことでもないのだ。
事実、数ヶ月に一度くらいはそういう機会もあったから、
そのときもYは、いつもと変わらない調子でSに
声をかけようとしていた。
ところが、Yはすぐに、Sの挙動がおかしいことに気がついた。
Sはもともとが用心深い性格で、
常にあたりの様子を気にしているようなところがあったのだが、
そのときの行動は尋常ではないように思えた。
Yは好奇心に手足の生えたような人間だったから、
咄嗟に看板の後ろに身を隠してSの様子をうかがった。
Sはせわしなく首を左右に動かし、
辺りを見回しているようだったが、
しばらくすると小走りにその場を離れた。
ある程度の距離を保ちながら、YがSの後をつけていくと、
人気のない小道の奥で、忽然とSの姿が壁の中に消えた。
Yが急いで駆け寄ると、そこには、人一人がようやく
通り抜けられるくらいの狭い道が続いていた。
Yは少し躊躇ったが、注意深く奥へと進んだ。
高い壁に囲まれた小道は薄暗く、Sの姿は見えなかった。
嫌な予感を覚えながらも足を進めるうち、
少し奥の角の先が明るくなっていることに気がついた。
Yは小走りに進み、そして、角の手前で立ち止まった。
向こうから、人の話し声が聞こえたのだ。
壁に張り付くようにして身を潜め、様子をうかがうと、
そこはちょっとした空き地になっているようで、
中心にSともう一人、別の誰かが立っていた。
何ごとか、小声で真剣に話し合っているようである。
Yは静かに身をかがめ、Sの密会の相手をのぞき見て、
動揺した。
Sと深刻そうに向き合っていたのは、他ならぬ、
Uだったのである。
Yは握ったこぶしの奥がじっとりと湿っていることに気がついた。
UはEのかけがえのない人であると同時に、Nとは同族の縁である。
Eというのは、Yにとって尊敬の対象となるだけでなく、
一生かけても返せない恩義があるとさえ感じている人物でもある。
それはEと同郷であるSにとっては尚更であろうと、Yは信じていた。
しかし、SがUと、このようにこっそり会っているということは、
それは、つまりEに対する完全な裏切りであるし、
ひいてはSが不倶戴天の敵と公言してやまないNと、
半ば二人三脚でここまで来たEとの関係を、
あえなく破綻させるきっかけともなりかねない。
まして、Iなどは言うに及ばないのだ。
───と、Yの足下でカランと乾いた音が響いた。
信じがたい光景に足が震え、転がっていた空き缶を蹴ってしまったのだ。
Yは心臓が止まるかと思うほどに驚き、小指の先まで硬直した。
もしも、この密会をYが目撃したことを知れば、
Sはどんな行動に出るか予測がつかない。
Yが消されるだけならばまだましともいえる。
Sの保護者でもあるあのGなどが出張ってくれば、
ことは複雑になりすぎる。
Gの子息はNの一族によって殺されたようなものであるから、
Gがこの機を逃すはずもなく、
おびただしい量の血が流れることはまず間違いない。
もはや、Y一人にどうにか出来る事態ではなくなっていた。
逃げるしかないと、Yがぎこちなく身体をひねったとき、
空き地の奥から、待たせたなと、野太い声が響いた。
すると、間髪入れずSとUの悲鳴にも近い歓声が上がり、
豪快な笑い声が続いた。
Yはしばらく動けずにいたが、三人が他愛もない雑談をはじめると、
ほっと胸をなで下ろした。
どうやらYの存在は気づかれてはいないようだった。
しかし、新たに現れた人物の声に聞き覚えのあることに思い当たり、
Yは戦慄した。
その声の主は、なんとOだったのである。
あまりに理解しがたいこの状況に、Yの頭脳はショート寸前だった。
なぜOがここにいるのだ。
Oといえば、Gの腹心中の腹心であり、Eの親友でもある。
SがOを快く思っていないのは、もはや周知のことであり、
それはOも同様、いや、それ以上のはずである。
何より、SとOは血液的も星座的にも非常に相性がよくない。
まして、UなどはおそらくGにとっては息子の仇であり、
たしかNの同族なのだから、Oと笑顔で会話するなどということは、
やはり、Yには得心がいかない。
そもそもYは、Uの娘であるJに、ほのかな想いを寄せており、
SやOなどが軽々しくUに話しかけることこそが、
何より許せないことなのである。
もちろん、Iなどは言うに及ばない。
パン、と、何かが弾けるような音がして、
Uが地面に倒れたのは、そのすぐあとだった。
混乱し、遠巻きに眺めていたYは、そのとき何が起きたのか
瞬時に理解することが出来なかった。
恐ろしい叫び声をあげながら、
Nの側近であるPが空き地に乱入したことにより、
事態はより混迷を極めた。
Oが怒鳴り散らしながらSに殴りかかると、
今度はPがOに発砲した。そう、Pは右手に拳銃を握っていたのだ。
そして、Sが倒れたUを庇うように覆い被さるのと、
YがOとPとの間に飛び出すのとはほとんど同時だった。
二発の銃弾がYの頬をかすめ、しゃがんだSの眉間に見事に命中した。
Pは事を為し遂げたのか、そうではないのか、
どちらともつかない微妙な表情を浮かべてYを見つめたが、
その胸からは大量の血が流れていた。
血にまみれた大振りのナイフをPの胸から抜き取ったOは、
不適な笑みを浮かべた。
しかし、その顔からは血の気が失せており、
やがて膝をガクガクと震わすと、白目をむいて崩れ落ちた。
惨劇に巻き込まれたYは、なぜ自分が生きているのは理解できず、
ただただ放心していたが、かすかに動くものを目にして我に返った。
眉間を貫かれたはずのSがかすかに口を動かしていたのだ。
Sがもう助からないことは明らかだった。
しかし、YはSにどうしても聞かねばならないことがあった。
どうしてこんな事になったのだ?
Sにその言葉が届いたかどうか、定かではない。
しかし、Sは最後の力を振り絞るようにして囁いた。
目の前にいるのが誰なのかさえわからない様子だったが、
Sは、うつろな目に涙を浮かべ、弱々しい声を上げた。
YはそのSの最後の言葉を確かに聞いたのだ。
「わ、わたしは、もうダメ、みたい・・・お願い、Yを・・
いえ、Y′を・・たす、ケ・・・テ・・」
Sが絶命する間際、Yは狂わんばかりに絶叫していた。
「Y′って、誰だ────ッ!!!!」

あとは、ただただ、Iの天下である。


というような物語を、是非、非常に右脳の発達した、
速読を得意とする子供に速読してもらいたいものだ。
そして、俺にもわかるように説明してほしい。
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