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2014/11/8 更新してないねぇー ねたはあるんだけどね
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自動販売機の信用問題
世の中のビジネスというのは、すべからく信頼関係によって成り立っている。
無論、自動販売機といえどもそれは変わらない。むしろ相手が機械であるが故に顧客の目はよりいっそう厳しく、ひとたび信用を失えば人間以上にそれを取り戻すことは困難であろう。

こんなことがあった。
そろそろ朝夕の肌寒さが身に浸みるようになってきた時期である。通勤時、自販機の温かい飲み物が無性に恋しくなって、路肩にそれを見つけるなり、矢も楯もたまらくなって、さっそく銭を投じて購入したわけだが、取り出し口から出てきたのは、思わず手を引っ込めたくなるほどによく冷えた缶コーヒーであった。
ひどい裏切りであろう。
この自販機では二度と買うまい、と心に誓った。

こんなこともあった。
仕事の合間、少々喉の渇きを覚え、自販機で缶コーヒーを購入しようと思い立った。ただ普通の缶コーヒーを買うのも面白くないので、ここはひとつ趣向を変えてデミタスを飲んでやろうかと一人ほくそ笑んだ。デミタス缶というのは値のわりに量が少なく、少々割高な代物だが、その分味が良い。
さっそく銭を投じてボタンを押し、ほくほく顔で取り出し口に手を伸ばしたわけだが、そこにあったのは「梅よろし」だった。
梅よろし。何かの間違いであろう。
梅よろしというのはペットボトルの飲料で、些か値が張り百二十円では購入できないため、この時点では少々得をした格好だが、如何せん缶コーヒーではない。どうしてもデミタスが飲みたかったので、迷わず再度銭を投じてボタンを押した。
出てきたのはやはり梅よろしである。
やむなく梅よろしを二本飲んだ。
ひどい仕打ちであろう。
この自販機では二度と買うまい、と心に誓った。

更にまた、こういうこともある。
先日、煙草を購入しようと自販機に三〇〇円を投入したときのことだ。買う銘柄はいつも決まっているので、迷わずそのボタンを押した。
出てきたのは二九〇円の別の銘柄だった。この時点ですでに十円の損をしているが、その上こちらの銘柄はタール1ミリであった。
1ミリ。
損をさせた上に、代用にもならぬ品を掴ませるとは何事か!
これはさすがに我慢ならない。
煙草は嗜好品であり、1ミリに甘んじるつもりは毛頭なかったので、迷わず再度銭を投じてボタンを押そうとしたが、できなかった。
三百円は高い。
加えて自販機に一個だけ違った銘柄が紛れ込んでいた可能性は低いような気がしたし、思うにずらりと1ミリが並んでいる。
こんな自販機では二度と買うものか、と心に誓いたかったが、この自販機は職場から一番近いところにあるため、そうもいかない。この自販機で煙草を買う頻度はかなり高いのである。
それから一週間というもの。
こわくてこの自販機で煙草を買うことができなかった。一週間後に買うときにも
並々ならぬ勇気がいった。

自販機というのは大変に便利な代物であるが、万が一、違った商品を掴まされた際にはどうすればよいのか。
誰に訴えればよいのか。
泣く泣く梅よろしを飲み、1ミリの煙草に甘んじている哀れな人々がことのほか多いのではないかと想像する。
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やむおえないが、友人の事でも
従来から、俺はここにネタのみを書くことを一貫して貫いてきた。事実や実体験を元にしたことはあっても、それをそのまま書いたことはない。すべからくネタである。
しかし最近、ネタが思い浮かばず、完全に煮詰まっている状態である。仕方が無いので、あまり気は乗らないが友人の話しでもしようかと思う。

今年の元旦の夜、友人Kから電話があった。
「新年明けましておめでとう」
「おお、Kか。どうした?いきなり畏まって」
「俺、今年結婚するよ」

新年早々驚いた。
もてなかったこの男が結婚する確立などないに等しいと思っていたからだ。

Kは大学時代の同級生である。29歳男。眼鏡をかけていて、肩幅がなく、猫背。
一応、高校まではバトミントン部で活躍していたというが、その面影は見られない。
しかしそのさえない風体のわりに、大学卒業後は、青果販売業に従事し、若干24歳で、あるスーパーの店長になった男である。
確かに頭は斬れるし、性格もいい。いつか幸せになってもらいたいとは思っていたが、そのときは以外と速く訪れたようだ。

「そうか。お前が結婚か。あまり女性に縁のなかったお前も、ついに汚名挽回となるのか」
「まあな。長い道のりだったぜ」
「式はいつ頃?」
「秋を予定している」
「ところで、相手はどんな人だ?仕事が忙しいわりに、よくそんな時間があったな」
「なに、客だ」

スーパーによく来る女性客と結婚するというのだからびっくりだ。
ついに客に食指を伸ばしはじめていたか。
やるな店長。

「どうやって話しかけた?」
「レジを打つとき、おつりをわざと間違えて渡して、後から追いかけていったのだ」
「確信犯だなー」
「まあな!」
「そんな姑息なことしないで、正々堂々と話しかければいいのに」
「うっさい。結果オーライだ」

そこから話すきっかけを得たものの、デートにこぎつけるのは大変だったそうだ。
レジの店員が、店の外まで追いかけてきて、お釣りを渡しながら、いきなりデートを申し込んできたわけである。そのときの彼女の最初の言葉は「なぜ?」であったそうだ。
当然である。彼女の言葉は的を得ている。
憮然とした表情のまま、彼女はKから逃れようとしたが、
Kのあまりのしつこさに、しぶしぶOKしてくれたということらしい。
OKをもらったときの、Kの浮き足立つ様子が手に取るようにわかる。
いざデートしてみると、彼女はわりと天然で、世間ズレしているところがあるらしい。
それがKをよりいっそう本気にさせたのだそうだ。Kの好みの性格だったわけである。

「子どもは何人の予定?」
「願わくば、3人だな。一姫二太郎といきたいところだ」
「多いな」
「へっへ」

そして、10月の大安吉日。披露宴当日である。
ここしばらく、肌寒い日が続いていたが、この日は暖かく、小春日和であった。雨男のKにしては珍しい。
入場。いつもと同じ、絶やさぬ笑顔で愛想を振りまきながらKが入場してきた。入場曲は、触りを聞いただけでわかったが、サザンオールスターズのナンバー、ロックンロール・スーパーマンである。
俺もそうなのだが、昔からKはサザンのファンだった。

ところで、俺を含めてKの友人たちは、嫁を見たことがなかった。皆、興味深々で注目していたのだが、Kの花嫁は予想以上に綺麗で、美しかった。Kにはもったいない。
正直言って悔しい。俺は忸怩たる思いで二人の入場を見守った。

ケーキ入刀、友人や上司のスピーチ、キャンドルサービス。
何人もの来賓から祝いの言葉をたむけられ、カメラを向けられるK。
普段は地味なKがこれほどフューチャーされたのは、この日くらいのものだろう。

俺もKを心から祝福し、美味しい料理に舌づつみを打った。
ラストを飾るKのスピーチも見事に決まり、この披露宴の優秀の美をかざった。
それだけで終われば、いい1日だったと言えるし、幸せな気分のままでいれただろう。
しかし、である。
披露宴が終わり、二次会に行こうとしたとき、新郎のKが突然やってきて、「二次会の司会、頼む」
と言ってきたのだ。
司会を頼んでいた友達が、急に来れなくなったのである。

「まじかよ!こんな急に頼まれても!」
「いや、大丈夫!進行は全部一任するから、あとは幹事たちとうまくコミニュケーション取ってやってくれ」
「よ・・・よしわかった!俺に任せとけ」

そう嘘ぶいてみせたものの、俺は披露宴の時の酔いが急激に覚めていくことがわかった。
二次会の司会など、どう考えても俺では役不足である。しかし、他ならぬKの頼み。
大学時代からの、気のおける友人として、断るわけにはいかなかったのである。

二次会の会場は、なんと披露宴の会場の隣の部屋であった。
飲み屋やおしゃれなレストランなどではなかったのだ。
しかも、嫁の上司なども多数参加するらしい。披露宴の、ある種厳粛な空気のまま、二次会をやらなければいけないわけだ。
会場は大切だ。飲み屋であれば多少ぐだぐだでもなんとかなるが、場所がここでは披露宴の続きである。
絶対絶命のピンチ。こんな場で司会など、できるのか。

披露宴終了から二次会開始まで1時間とない。
短い時間の中で、幹事担当者から、予定しているイベントや余興の流れを聞き、ビンゴを始めるタイミングなどを打ち合わせる。
頭の中で二次会開始から終了までをシュミレーションしてみる。
ああ、うまく喋れるだろうか。2時間も場を取り仕切ることができるだろうか。
嫌が応にも緊張感が高まってくる。

・・・・
そこから、二次会が終了するまで、俺の記憶は曖昧で、うる覚えである。
ビンゴの抽選を行う機械が動かなくなるという唯一にして危機一発のピンチも、他の幹事スタッフと俺の機転でなんとかリカバリしたし、終始和やか且つ賑やかなふいんきで二次会は進み、場が冷めることは無かったように思う。
五里夢中の状態ではあったが、俺の司会は、おそらくそれなりにうまくいったのではないだろうか。

新郎のKも、二次会参加者も満足してくれたようだ。
よかった。
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毛むくじゃらの話をしよう
まったく、毛むくじゃらのことを考えるとイライラする。
あいつらはいったい何がしたいのだと疑問に思うし、何を目的にして生きているのか、何を人生の糧にしているのか、それらの一々に思いを巡らせれば、我とは無しに義憤すらも覚えるほどだ。
毛むくじゃらというのは、本来、体毛がもじゃもじゃで凄いことになっているやつのことだが、現代人の感覚では、案外「毛深い」程度の認識になっているのが本当に残念でならない。
腕や胸やスネ、あるいは背中の毛が、平均よりも若干多いという程度で、毛むくじゃらを騙るような輩もいれば、逆にその程度の毛むくじゃらをキモイと言って毛嫌いする馬鹿者もいる。しかし、本当の毛むくじゃらというのは、そんなものではない。世の中の皆が皆、思い込みと偏見から真実の毛むくじゃらを見過ごしているのだ。

例えば、馬という生き物がいる。
この生き物は本物の毛むくじゃらだ。
何を馬鹿な、と思う方も多いだろうが、馬でも鹿でもやっぱり正真正銘の毛むくじゃらなのだ。納得いかないというなら、あらためて馬や鹿の全身を観察してみて欲しい。頭でも首でも足でも構わないが、それよりはむしろまぶたや目尻、鼻梁や耳朶の方がわかりやすいだろう。その毛むくじゃらぶりは一目瞭然で、いかに滑らかなように見えても、我々とは比較するのも馬鹿馬鹿しいほどである。
いったい、何処の世界にまぶたや目尻にまで剛毛を生やしている人間がいるというのか。

他にも意外なところでは、ホルスタインなどが挙げられるが、もっとも世間で誤解されている毛むくじゃらは、ミニーマウス、キティちゃん、ミッフィー、ピカチュウなどのグループだ。
おそらく、このグループを毛むくじゃらに分類する者は少ないだろう。しかし、間違いなくこれらは毛むくじゃらである。
部分的に考えるとわかりやすいので、例としてヒゲを挙げてみる。
ヒゲというと、
「いや、ミニーにはヒゲはないよ。キティちゃんにはあるけどね」
と思う方が多いに違いない。しかしそれは誤解というものだ。
確かにキティちゃんにはヒゲがある。しかも、本来あってはならない位置、つまり目の横に三本の黒いヒゲだ。記憶を頼りにキティちゃんを描こうとすると、鼻の横に三本ヒゲを描いてしまって、少々リアルな具合になる。

それはともかく、今問題にしているのは触毛のことではない。とりあえず人でいうところの、口ヒゲや顎ヒゲのあたりを思い浮かべてもらいたい。
無論、奴らは口ひげが生えている。顎ヒゲも生えている。
顔面毛に覆われているので気づきにくいが、きちんとむだ毛を処理して、口の周りにヒゲを残せば、立派なダンディーになるではないか。
まったく、そういうところが毛むくじゃらだというのだ。
我々は直ちにこの認識を改めなくてはならないし、毛むくじゃらどもも即刻、自らの認識を改めるべきだ。

毛むくじゃらどもは自分が毛むくじゃらだと気がついていないのだから非常にタチが悪い。いや、或いは自覚しているのかもしれないが、敢えてそれを知らぬ顔で振る舞っているようなフシが見受けられる。おそらく毛むくじゃらという実態が世間に知れると、キモイといって毛嫌いされることを恐れているのだろう。
しかし、毛むくじゃらどもよ。今後はもっと積極的に自分が毛むくじゃらであることをアピールしなくては詐欺というものだ。もっとわかりやすく毛を伸ばし放題にしてムクムクしなくてはいけない。

そう。

半端な毛むくじゃらどもはムックを見習うがいい。
あれは偉い。あれこそ本当の毛むくじゃらだ。王だ。キングだ。
キングオブ毛むくじゃら!
しかし、ムックが何を目的に生きているのか、何を人生の糧にしているのか、そのあたりがどうにもよくわからない。
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午後の曳航
本は読むものだ。
読む以外には、鍋の蓋にもならない。
「本を読んだ」とは「読み終えた」と同意語で、読み終えていない本は、読んだとは言わない。
ただ読みかけなだけだ。読書に挫折はない。
2年前に3ページ読んだだけの本でも、やはり読みかけの本である。
自ら挫折を宣言したときのみ、挫折することができる。
時間をかけることなど全然問題ではない。
誰でも、多かれ少なかれ読書には時間がかかる。
食事時間に個人差があるのと同じことだ。
読み終えることは何も難しいことではないし、恐れることもない。
ページに際限のある本ならば、たとえどんなに厚くても、
文字を追うだけでいずれ読み終わる。
きわめて単純な作業だから、文字が読めれば誰でもできる。
難しいのは、面白くない本をいかに早く大量に消費するか。
更に難しいのはそれを正確に理解し、記憶するということ。
同じことが人生に対しても言える。

さて、そんなあなたにお薦めの一冊。

「ハサミ男」S
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Mr.RED MAN
昔、野良猫に名前をつけてあげたことがありました。
特に深い意味とかはなくて、まあ無難にミーコとか、そんなのです。
ただ、これは特定の一匹の名前ではなくて、ウチの玄関にやってくる野良猫はみんなミーコでした。
関係ないですが、家で飼ってるインコの名前もミーコでした。
猫のミーコは三毛のときもあれば、ブチのときもありましたし、トラのときもあれば、チャのときもありました。
そんなミーコ。野良猫だけに一箇所に留まることはなく、気儘によその家にも出入りしています。
ですから、たまたまよその家でミーコを見かけることがあって、その家の人がミーコのことを「タマ」とか「ミケ」とか呼んでいるのを耳にすると、僕はちょっと不思議な気持ちになったものです。
ミーコに裏切られたような、ミーコが世間に羽ばたいてくれたような。
寂しくもあり、誇らしくもある……という、何とも複雑な気持ちです。

さて、先日、とある街角でカップルのこんな会話を耳にしました。

「ねぇ、ちょっと聞いてよー、あいつまたコンビニにいたよー。入り口んところで突っ立っててさー」
「レッドマン?」
「そう、レッドマン。ぜったヤバイって、あいつー」
「前に立ち読みしてたの見たけどさ。いっつもいるんだよなー、レッドマン」
「何やってる人かなー。駅とかにもいたんだよー」
「よく金あるよなー」
「ないよー、あんなのー」
「生活保護とか受けてるんじゃないの?」
「えー、でもそれだけじゃ無理でしょー。生活保護って、けっこう貰えるのー?」
「さぁー、わっかんないけど。でも弁当とか買ってるでしょー」
「買ってないよー。拾ってるんでしょー? 捨ててあるのとかー」

……レッドマン。
直訳すると「赤い男」
僕はなんだか、寂しいような、誇らしいような、
ちょっと複雑な気持ちになりました。

「そういえば聞いたことがある」
と、テリーマンなら言ったでしょう。
ウチの近辺には、季節を問わず、連日連夜、赤い服(シャツでもスカートでも)を何枚も重ね着して街中を徘徊している、ちょっと変わったおじさん(職業不明・60〜70代くらい)がいるのですが、このおじさんはかなりの有名人で、近隣に住んでいる人はもちろん、わりと離れた所に住んでいる人たちもその存在を知っていたりします。
僕の場合の一例を挙げると、ほとんど初対面だった職場の人と、そのおじさんのことで盛り上がって仲良くなったことがあります。
「あれ、それじゃけっこう近所じゃないですか。俺の家すぐそこですよ」
「そうなんですか? あっ、じゃあ、もしかして、あの人知ってます? なんか、いっつも赤い服着てて──」
「ああ! あの赤い変なおじさんでしょう? 知ってますよー」
「やっぱり!? うわー、有名なんだー」
といった具合。
そんなわけで、僕の周囲ではその謎のおじさんのことを「赤いおっさん」とか「傾き者(かぶきもの)」とか「傾き者の王様」とか、そんなふうに呼んで数年も前から親しんでいたのです。

それが、おそらくカップルの言う「レッドマン」と同一人物。
僕はドキドキしながら、二人の会話に耳を傾けました。

「ちょーマジやばいんだけど、レッドマン」
「ぜったい浮浪者だよねー」

なるほど、レッドマンとはなかなか新鮮な響きです。
言い得て妙、とはこのことでしょう。
確かに、赤いおっさんの見た目はヤバイ以外の何者でもありませんし、
(基本スカート。白髪。禿げ)
(赤い服をたくさん着すぎてダルマみたいになっている)
(一年通して同じ服)
(何をしている人か一切不明)
終始無言でのっそりと移動している、その一目見たら忘れられないインパクト。
それがたまにどころか、けっこうな頻度で見かけるのですから、いかに無害な存在とはいえ、若者たちが不安な気持ちになるのもわからないではありません。
けれど、カップルの二人がだんだんと、赤いおっさんのことを社会のゴミのように言うのを聞いているうち、僕は次第に苛立ちを覚えている自分に気がつきました。
もちろん、カップルの気持ちだって理解できるのですが……
それでも最後にははっきりと怒りを感じて、
「お前たちにあのおっさんの何がわかる!」
と文句のひとつも言ってやりたい気持ちになりました。

特に、

「やっぱりこのあたりに住んでんのかなー」
「住んでないよー、公園とかで寝てるんじゃないのー」

これがいけなかった。
僕はこの愚かなカップルに言ってやりたい。

お前たちは間違ってる。
赤いおっさんはそんなんじゃない。
赤いおっさんは野宿なんかしない。
赤いおっさんはちゃんとマンションに住んでいるんだ。
俺のマンション(賃貸)の上階に!

いや、マジで。
朝挨拶とかしたことあるし。
おっさん、何か色々拾ってきてマンションの玄関先にため込んでます。
地球儀とかゴミとか。

うーん。大丈夫なのかなぁ、このマンション……。
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ポジティブマン
職場の後輩のA君は昨年入社した坊主頭の好青年。
学生時代はずっと体育会系だったという彼は、明るく朗らかな性格で、みんなのムードメーカー的存在であります。
仕事に対する情熱は人並み以上。
責任感が強く、後輩の面倒見もよく、日々の努力を怠らない、という、まさにリーダータイプの人材ですが、ときどき羽目を外してはしゃぎすぎたり、茶目っ気というのか、少々子供っぽい愛嬌を見せることがあるので、上司たちからは叱咤されながらも、それ以上に可愛がられているようです。
ただ、A君には唯一と言っていい欠点があって、それは失敗したときについ悩みすぎてしまうこと、つまり、思考がちょっとネガティブ、ということです。
業務上の失敗なんて誰にだってあることなのだから、適当に反省したフリをして次から気をつければよい、と僕などは思うのですが、以前からA君に大きな期待を寄せている上司たちは、ついつい些細なミスを取り上げて執拗に責め立ててしまったり、そこから発展してA君の職業意識に対する指導に及んでしまったりするのです。
たいていの場合、このころになると上司の話はすっかり本題から逸れており、ほとんど迂遠で不毛な自分語りになっていることしばしばですが、根が真面目なA君はそれをぜんぶ真剣に受け止めて、「どうして自分はこんなこともできないのだろう……」と、どんどん自分を追い詰めてしまいます。
僕たち同僚に対しては、「もうダメかもしれません……」とか、傍から見ていれば大げさとしか思えないような気弱な発言をします。
そんなA君に対して、上司たちは
「そのマイナス思考がよくないのだ」と更に叱咤し、僕たちは「大丈夫、大丈夫、そんなに思い詰めることはないよ。怒られてるうちは期待されてるってことだから」
とか、ちょっとそれらしいことを言って励ましたりします。
するとA君は、ずいぶん悩んだ末に、いくらか無理に笑って、
「そうか……そうですよね。何事もプラスに考えないといけませんよね。
 わッかりました! ありがとうございます!
 もっとポジティブになるようにがんばります。ポジティブ、ポジティブ」
と、ようやく何かを吹っ切ったように仕事に復帰。
それからデスクに向き直って、せっせとペンを走らせている様子でした。
僕はそんなA君の後ろ姿を見て、「いい若者だなぁ」と、つくづく思うのです。
がんばれ、A君、と。

さて、その翌日。
仕事熱心なA君は、いつもノートにメモを取っています。
実際に内容を見せてもらったことはありませんが、どうやら、その日やらなければいけないことから、翌日のスケジュール、業務のポイント、上司や同僚からのアドバイス、あるいは自分が思ったこと感じたこと、今日の反省点から今後の課題にいたるまで、おそらく日記的な意味も込めて、こまめにノートに書き込んでいる様子です。
その日、A君のデスクを通りかかった僕は、そこでたまたま、そのノートを見かけます。
昨日、何かを吹っ切った後にA君が一生懸命書き込んでいたノートです。
A君は席を外しており、ページが開かれている状態。
ちょっと悪いかな、という気もしましたが、僕は何気なく、チラッと、見るともなしにそのノートを覗き込みました。
正直なところ、失敗から立ち直って前向きにがんばると宣言したA君が、どんなことを考えたのか、少し気になってもいたのです。

ノートには、こんなことが書かれておりました。


               *

ポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブ

               *

そこで僕たちはA君に言いました。

「いや、ネガティブだろ、これ」
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山の手御婦人の憂鬱
「あのう」
「へぃらっしゃい」
「いいですか」
「おっと。珍しくご婦人がいらっしゃったと思ったら、うら若き乙女のようじゃねえですかい」
「ほんとうにいいんですか」
「いいにきまってるじゃないの。うちのおでん屋は来るもの拒まずだ」
「やっぱりやめたほうがいいかしら」
「何言ってんだい。大歓迎だい。ささ、お座んなさい。おでんは何にしやしょう?」
「じゃあ、大根とはんぺんを」
「あいよ。かー。近くでよく見るとべっぴんさんだ。よし、あっしのおごりだ。酒を一杯サービスしちゃおうじゃないの」
「すいません。いただきます」
「たった一人でこんなしがねえ屋台のおでん屋にようこそきておくんなすった。一体全体どういう風の吹きまわしかねえ」
「家へ・・・家へ帰りたくないのです」
「そいつはいけねえ。あんた家出娘かい。まさかとは思うが、酒を飲めない齢じゃねえでしょうな」
「私はもう大人です。娘などという年じゃありません。ましてや家出など。ぐびぐび。・・・お酒、もう一杯くださるかしら」
「そんなら安心だ。いい飲みっぷりだねえ。二杯目からはお勘定つけとくよ」
「ええ。ぐびぐび」
「で、家に帰りたくねえってどういうことだい。あっしでよけりゃわけを聞いてやりやしょう」
「家に帰りたくないというか・・・明日になるのが怖い。もう死んでしまいたい」
「おだやかじゃねえですな。妙齢のご婦人の力になれるかどうか定かじゃねえが、話せばすっきりすることもあるもんですよ」
「そういうものでしょうか」
「おうよ。こちとらおでん屋稼業20年。何人ものサラリーマンの話を聞いては元気付けてきた実績があらあね」
「ここ二ヶ月ほど、朝起きるとですね」
「おっ。始まったね。そう来なくっちゃ」
「ある曲が思い浮かぶのです」
「ふんふん」
「ほら、よくありますでしょう?朝起きて一番最初に聴いた歌とか、なぜか無意識に思い出した歌が、その日一日中頭から離れなくなる事が」
「ああ。たいして好きでもねえ曲なのに無意識に口ずさんじまったりして、こっ恥ずかしくなることが、このあっしにも確かにあるねえ」
「それです。それの症状がひどいんです」
「しどいんですかい」
「ひどいです。ここ二ヶ月、ずっと同じ曲が私の頭を支配しているのですから」
「二ヶ月も、四六時中ですかい」
「はい。一日中、昼夜問わず、少しでも気を抜くとフルコーラスかつエンドレスで頭の中で再生されてしまいます」
「するってえと、今もかい」
「今もです」
「で、何て曲が?」
「島唄です」
「島唄って、ええと」
「BOOMの、島唄です」
「なんというか、また微妙な曲を持ってきたもんだ」
「そう言われましても、私も困ってしまいますが」
「まあでも、気にしないことが一番でさあ。あっしにも似たような経験は山ほどあるってもんだ」
「それだけではないんです」
「と、いうと?」
「PVが、PVが流れるのです」
「PV・・・プロモーションビデオってやつか」
「はい。曲に合わせて、延々と」
「島唄のPVというと、ボーカルのあんちゃん・・・宮沢って奴か?そいつが三線弾いて終始アップで歌い続けてるイメージがあるが、それのことかい?」
「いえ。私オリジナルのなんです」
「ご婦人のオリジナル?」
「はい。曲とは無関係のPVが、私の頭の中でぐるぐる、ぐるぐると流れ続けるのです」
「いよいよ面白くなってきたねえ。よし、腰据えて聞くことにして、あっしも酒を付き合おうじゃないの。どんな映像なんだい?」
「お話しても良いのですが・・・。ぐびぐび」
「何かまずいことでもあるんですかい?」
「いえ。恥ずかしくて・・・」
「嫌なら構わねえよ。ご婦人が話したがらねえ話を無理矢理聞くほどあっしも野暮天じゃねえや」
「いえ。大丈夫です。イントロの部分でもぐらが登場します」
「もぐら」
「ええ。すごく背が高いんです。・・・お酒、おかわりを。あとつみれとちくわ」
「あいよ。・・・背が高ぇもぐら?イメェジが沸きにくいねえ」
「背が高いと言ったら背が高いんです。何せ二足歩行してるんですから。普通に道を歩いてるんです」
「どれくらい背が高ぇんですかい?」
「そうですね。正確にはわかりませんが、180〜190cm程でしょうか」
「人間並み、いやそれ以上じゃねえですかい」
「そうですね」
「そんなもぐらが、島唄のイントロに乗って二本足で歩き出す映像が、お前さん、いやご婦人の頭の中で流れる、と。こういうわけだぁね」
「ええ。そのもぐら、やがてバッティングセンターに入ります」
「島唄で言うと、イントロが終わって歌い出しのあたりですかい?でえごの花が咲き、ってところかい」
「そうですね。バッティングセンターで、やおらマイ・バットを取り出して、300円支払って、そして・・・」
「そして・・・?何が始まるってんだ」
「打ち始めるのです」
「わはは。まあ、そりゃ打ちまさぁな。バッティングセンターにバット持参で来て、お金払ったなら、たとえもぐらでも、そりゃ打ちまさぁな」
「でも、もぐらなんですよ」
「バット持って打ちに来てるんだもんねえ。据え膳打たぬはなんとやらだ」
「少し違うような」
「おっといけねえ。据え球か?いやいや球は据えてねえな。それにしてもお嬢さん、変なこと想像してるもんだぁね」
「想像なんてしてません。勝手に、勝手にそんな映像が浮かんでしまうんです。そんなシュールな事、考えようとしても思いつきません」
「こいつは失礼。あっしとしたことが、取り乱させちまって申し訳ねえ。で、それで終わりですかい」
「終わりなもんですか」
「続きがあるんですかい」
「だってフルコーラス終わるまで、映像もずっとあるんですよ」
「じゃあ続きを聞こうじゃないの」
「そのもぐらですが、持参してきたのはバットだけではなくて、グローブも持ってきたのです」
「グローブ?するってえと、打つと同時に捕るわけですかい?その変態もぐらの野郎」
「いえ、そのグローブではなくて、バッティンググローブです。バット握るときに滑り止めにするためにはめるグローブです」
「本格的だねえ。やる気満々もいいとこじゃないですかい」
「でしょう?その本格的スタイルで、松坂の球を打ち返すのです」
「松坂?松坂ってえと、あの有名な日本人メジャーリーグピッチャーの松坂かい」
「ええ」
「バッティングセンターに、なんだって松坂がいるんだい」
「私が知るわけないでしょう。とにかく松坂が投げてるんです」
「でも相手が松坂じゃあ、いくら背の高い二足歩行の変態もぐらといえど、相手が悪いや。打つのは容易じゃないでしょうに」
「問題はそこでしょうか。でも、打つんです。内角低めに切れ込んでくるスライダーを、いとも簡単に流し打ちするんです」
「松坂が投げる内角のスライダーを流し打ち?そのもぐら、生意気にも左打席かい」
「そうです。もうイチローばりに快音を響かせて打つんです。流し打ちで。右手一本で」
「まったく、てぇしたもぐらがいたもんだ」
「まだ続きます。唄がサビに入る頃、松坂が」
「松坂が?」
「急にパソコンを始めるんです」
「ピッチャーの仕事を放棄してですかい?」
「・・・まあバッティングセンターのピッチャー役ですし、一回300円なので、せいぜい30球程度投げればいいわけですから・・・」
「もぐらは?肝心要のもぐらのもぐ公はどうしちまったんだい」
「いません。その頃には、主役は松坂に変わっています」
「そうかい。じゃあひと仕事終えた松坂が、その場で一人でパソコンを始める、って寸法か」
「ええ。ピッチャーマウンドに座り込んで、DELLのノートパソコンを広げてプログラミングを始めるのです」
「プログラミングですかい。あっしは横文字は苦手でさあ」
「少し専門的な話になるので、詳細は省きますが、たぶんJAVA、というかJSPでwebアプリの開発を試みているのです」
「よくわからんが、そりゃ滑稽な場面なんだろうねえ」
「ええ。『くそっうまく動かねぇよ』などといって帽子を叩きつけたりします。そうこうするうちに、島唄の1番が終わります」
「もぐらと松坂で1番まるごと使っちまうわけでさあね」
「そうです。ぐびぐび」
「で、2番に続く、と」
「はい。2番は、再びもぐらが登場します。お酒おかわりを。あとこんにゃくとこんぶ」
「あいよ。またもぐら野郎の登場ですかい。小生意気な」
「そういわれても、そうなんですもの」
「もぐらとか松坂とかパソコンとか、イメェジが沸きにくくてしょうがねえや」
「あの、もうお話しないほうがいいですか?」
「とんでもねえ。乗りかかった船だ。最後まで聞きやしょう。で、もぐらのもぐ公、今度は何始めるんだい?」
「ハワイのビーチにいます」
「バカンスを満喫してるわけかい。ワイハーってやつかい」
「はい。サマーベッド?ビーチベッドというのでしょうか。あれに寝っころがって、サングラスをかけて」
「さっきから生意気なもぐらだねえ。小憎らしいったらないねえ」
「手を頭の後ろに組んで、足を組んで、傍らにはトロピカルなジュースが」
「ビーチの基本スタイルじゃねえですか。あっしもそんなことしてみてえもんだ」
「・・・そのジュースの入れ物がですね」
「あれでしょうや?木の実を割ったようなやつ。ココナッツといったかな。あれに入れてるんでしょう。ひん曲がったストロー付きで」
「いえ。ヘルメットです。ヘルメットを裏返して、その中にトロピカルなジュースが入っているのです」
「ヘルメットですかい。そいつはまた大容量な入れモンときたもんだ」
「容量の問題ではないような」
「それにつけても、また何だってヘルメットなんだい。どういった了見だい」
「まあ、たぶんもぐらですから・・・」
「なるほど。もぐらだから穴を掘る。穴掘るにはヘルメット着用が義務でさあね。安全第一だ」
「一番身近というか、手っ取り早く入れ物を調達したというか、とにかくそんな感じでしょうね」
「もぐらにサングラスにヘルメットとくりゃあ、ギャグマンガにありがちなお決まりのセットだもんねえ」
「ギャグマンガ・・・そうですね・・・。ぐびぐび」
「それにしても、屋台やっててこんなに愉快な話を聞いたなぁ初めてだ。ちょっとタバコ吸わしてもらうよ」
「どうぞ。じゃあお酒もう一杯と、あと巾着としらたきと厚揚げ」
「あいよ。・・・プハー。タバコも酒もうめぇや。よし続きを聞かしておくんなさい」
「はい。もぐら、そのまま寝てしまいます」
「何だ寝ちまうのかい。盛り上がってきたってのに。それじゃあ映像に動きが無いねえ」
「そうですね。そのまま2番のサビまで来てしまいます」
「その、サビに来るとどうなるんで?」
「すっかり焼きすぎたのでしょうか。もぐら、全身真っ黒になってしまうのです」
「もぐらったら元から黒いでしょうや。真っ黒ったって、そんなに変わるもんでもねえとお見受けしやすがね」
「まあ、元が黒いのはそのとおりなんですが、焦げているというったほうが良いでしょうか。体から煙出してますし」
「ブハッ。そりゃドリフのコントばりじゃねえですかい。チョーさんもびっくりだ」
「ああそうですね。体毛がちりちりになってますし」
「いい気味だねえ。もぐらの分際でいい気になってっからそういう目に遭うってこった」
「で、自分の変わり果てた姿を見て飛び上がって、サマーベッドを降りて、砂の上に立って、砂が熱くてまた飛び上がって、慌てて逃げていきます。途中でカニに足の指を挟まれます」
「いよいよもってギャグマンガだねえ」
「はい。両手挙げて、足はぐるぐるしてて、道路標識の「すべりやすい」みたいな轍を残して逃げていきます」
「こいつは下手な落語より滑稽だ。で、それで2番は終わりかい」
「はい」
「そんならもうラストだあね」
「はい。やはりもぐらが出てくるのですが」
「やっぱしそう来たか。今度は何だい?」
「画面、いえ画面などありませんが、その、映像の中央を歩いています。左に向かって」
「最初に登場したときとおんなじだ」
「うーん。詳しく言うと、もぐらは足踏みしてるだけで、背景が動いているというか」
「読めた。三流アニメのエンディングテーマみたいなもんじゃねえですかい」
「そうですそうです。スタッフロール的なものが流れるんです。スタッフなんていないのに」
「じゃあ、何て書いてあるんだい」
「いえ、ぼやけてて読めません」
「そうかい。残念だねえ」
「それから曲が終わるまで、もぐら、歩きます。たまに転んだり空き缶が飛んできたりします」
「いよいよもって三流ギャグアニメのエンディングだねえ。でも、曲は島唄だってんだからおかしいったらないね」
「そして、曲が終わります」
「ようやくかい。長かったねえ」
「ですが、映像はそのままで、また曲が最初から始まって、そのもぐら、やがてバッティングセンターに・・・」
「あちゃー。もう一周始まっちまうのかい」
「ですから、エンドレスと申し上げたでしょう」
「そういうオチかい。今の話が本物なら、こりゃあんたみたいなご婦人でなくても、二ヶ月ずっと頭ん中流れてたら参っちまうねえ」
「ああ。もう嫌。死んでしまいたい。これが飲まずにいられますか。ぐびぐび」
「待ちねえ。まあ確かに嫌だってのも痛えほどわかるが、別段気にしなけりゃいずれ忘れるでしょうや。それまでの辛抱だ」
「あなたみたいな屋台の親爺に私の気持ちなど分からないでしょう。お酒、おかわり」
「む。そう言われちまっちゃあ返す言葉もねえですがね。どうしようもねえってもんでしょうよ」
「とにかく、お酒をのんで忘れるしかないんです。ぐびぐび」
「ご婦人。そんなに飲んだら体に悪ィよ。ほどほどにしときな」
「うるさい親爺ね。屋台の分際で偉そうに。私は客です。はいおかわり。早く注ぎなさい。ひっく」
「ご婦人。旦那さんか親御さんが心配してねえんですかい」
「ぐびぐび。ぷはー。あなたなんかに話すんじゃなかったわ。はいお勘定。ではもう一軒、別のところで飲み直しますので」
「お待ちなさいって。そんな千鳥足じゃあどの店も入れてくれねえよ」
「ういー、ひっく」
「こいつはまた難儀なお客に来られちまったもんだ。どうしたもんかねえ。ああ寝ちまった」
「ぐーぐー」
「もぐら、ねぇ・・・」
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国語
設問1
次の文を読んで、以下の問いに答えなさい。

まずこのペヤングにかやくを入れ、熱湯を適量注ぎ、(2)3分待つ。その後、湯を切って特製ソースと絡め、ふりかけ、スパイス、そしてからしマヨネーズを加えれば、ほぼ間違いなく、ぺろりと美味しく頂くことが可能だろう。
しかし、ここで問題なのは「湯を切る」という行程である。
湯を切らねば(3)カップ焼きそばとして成立しないから、湯を切るのは当然と言えるのだが……もし仮に、この湯切りの際に、より徹底的な作業を期すあまり(つまり、完全に水分を取り除こうと躍起になるあまり)、ついつい力を入れすぎて、
──ずるり。
と、麺が丸ごと四角いカップのふちから滑り出してしまったらどうか?
しかも、その麺の落ちた先は、清浄とは言い難いシンクの中であり、あろうことか、まだ洗っていない汚れた食器類が所狭しと並んでいたとしたら。

再び元の状態に戻せる反応を(a)という。
シンクに(1)べろんと横たわっている麺の束を、誰にも悟られないようにこっそり鷲掴みにしてカップに戻し、何食わぬふうを装って特製ソースと絡め、ふりかけ、スパイス、そしてからしマヨネーズを加えれば、案外、ぺろりと美味しく頂くことが可能であろうか?
もちろん、注意深く観察してみれば、その麺には何やら見慣れぬ茶色の汚れが付着するなどしており、完全に元の状態に戻ったとは言い難いが、この問題はソースとマヨネーズを絡めたことによってほぼ全面的に解消されている……。

このような場合、多くの人間は食欲よりも(4)何か大切なモノを守るために、これを不可逆な変化と見なして泣く泣くそのペヤングを廃棄するであろう。

(以下省略)


問1
下線部(1)を幹事にまかせなさい。

問2
下線部(2)の時の作者の心境として正しいものはどれか。
A.歯医者に行くのが憂鬱で仕方が無い
B.オラオラオラオラオラオラオラ
C.デスクトップパソコンのことをディスクトップパソコンと言っている知人を注意できない
D.悪い

Dと答えた場合のみ以下の質問に答えること。
マルチコア時代に向けたパラレル・コンピューティングへの移行における、より柔軟なマルチスレッドプログラミングの必要性とその開発手法について2字以内にまとめよ。

問3
(a)に入る語句として適切なものはどれか。寝言で答えよ。
A.引き出しデスマッチ
B.ノンストップデブ
C.ミッドナイトうんこ
D.あるある探検隊!!ベルリンの赤い雨!!

問4
下線部(3)と同義の熟語はどれか。
A.昇竜拳 VS 種子島
B.宿便の鎮魂歌
C.タッキー&翼 featuring エミネム
D.その他(   )

問5
下線部(4)は、明確な表現を避け、あえて曖昧に記述することにより、その対象が何を表すかを読者のイメージに任せる手法である。
なぜこのような手法を用いているのか、その理由を答えよ。
但し、回答には以下の語句を用いること。
・お茶とコーヒーの軋轢
・ハムのおまわりさん
・アルプスの少女もぐら

問6
本文を通じて、作者が言いたかったことを恥じらいながら答えよ。
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2007年携帯戦争後半戦〜スマートフォンは市場活性化の起爆剤になりうるか?〜
今年も依然として、携帯電話の各キャリアによる熾烈なシェア争いが続いている。
DoCoMo2.0というキーワードを前面に出し、
有名タレントを多数用いるという力技を展開しているのはドコモである。
ソフトバンクはホワイトプランに代表される、条件付きながらも話し放題という、キャリアにとって博打ともいえるプランが今のところ成功し、他キャリアをしのぐ勢いでシェアを伸ばし始めた。
AUは若者を惹きつける高機能かつ洗練されたデザインの端末を多く出し続けており、シェア拡大スピードはドコモを上回るほどになっている。
そのため、無理にソフトバンクの戦法に倣うようなことをせず、あくまで話し放題などの通話定額プランは出さない方針のようだ。
話し放題といえば、PHS唯一のキャリアであるウィルコムが気を吐いているといえよう。
特に大きな話題は無いものの、PHS同士であれば24時間話し放題、またメールはPHSに限らず携帯宛、PC宛に出しても完全無料というのが大きな強みである。スマートフォン分野でも現在のところ大きなシェアを獲得している。

さて、2007年も第3四半期に入り、そろそろ年末商戦に向けた争いが動き始める頃だろうと思われるが、各キャリアはどのような戦略をもってくるのだろうか。
土に詳しい、もぐら氏に話を聞いてみることにした。

――――まずドコモですが、DoCoMo2.0に対するユーザの反応がどうも芳しくないようです。
イメージが先行しすぎていて、実際のところ何がどう変わっているのかが見えてこない、ということのようですが。

「すいません。よくわかりません。私、もぐらなものですから」

――――なるほど。では、今後の戦略としてはどういったものが考えられるでしょうか。

「もっと土について質問していただけますか」

――――そうなると、単に端末ラインナップが豊富であるだけでなく、カラーバリエーションも多数用意するという戦略が望ましいのでしょうか?

「ですから我々もぐらとしましては、目が見えないわけですので、カラーなどと言われましても」

――――ありがとうございます。では続きましてAUですが。

「金の元素記号です。土しか知らないと思ってバカにしないでいただきたい」

――――そうですか。ではスマートフォンの普及にも力を注いでいくべきであると?

「なぜ私がこの場に呼ばれたのか、ご説明願いたいのですが」

――――ソフトバンクは昨年末から様々なプランが発表されては消え、挙げ句の果てに無謀ともいえる話し放題プランを出してきましたが、今のところそれが奏功しているようにも見えます。

「繰り返しになってしまい申し訳ないのですが、私はもぐらです」

――――確かに、話し放題プランで個人、法人ともにユーザを獲得し続けてきたウィルコムにとっては、楽観できない状況にあると思われます。そのあたりは?

「土の話ができると思って楽しみにしていたので、正直なところ残念です」

――――それでは2007年第3四半期までの総括と、今後の展望について簡単にまとめていただけますか?

「もぐらの観点からまとめさせていただきますと、まず土の存在が」

――――ありがとうございました。

実は、もぐら氏との対談は、この後数時間にも及び、日本国内にとどまらず、海外事情にまで目を向けた携帯電話業界の展望や、今後無視できない市場となるであろうスマートフォン、果ては土に至るまで熱く語っていただいた。
iPhoneの登場に例を見るまでもなく、海外メーカ製のスマートフォン端末に今後の注目が集まることは必至であり、独自の進化を遂げていた国内の各キャリアがどのようにこの流れに乗っていくのか、また、今後の土の展望が楽しみなところである。
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Feel the heat!
選挙戦が始まると、街頭で演説している候補者をよく見かけます。
近所の駅前では、出勤時間帯を狙って毎朝かわるがわる
別の候補者が現れては声を張り上げて演説をしています。
そのすぐとなりでは、アコムのお姉さんがティッシュを配っていたり、
ホットペッパーを山積みにしているお兄さんたちがいたりするのですが、
彼らはお互いに棲み分けでもしているのか、
きっちりと自分たちのテリトリーを守っているので、
駅前がカオス状態に陥ることはありません。

しかし、この棲み分けは正当なものなのでしょうか。
みんながみんな、少なからず演説者に遠慮のようなものを感じていて、
その結果、駅前の秩序が守られているのではないのでしょうか。

「おはようございます、アコムです」
と、わりあい控えめでありながらも、
ごく自然に通行人にティッシュを手渡すアコムのお姉さんたちの技術は
相当に洗練されたものです。
朝の通勤時という、大半の人間にとって愉快でない時間帯、
起きたばかりで何事に対しても億劫になっているこの時間帯に、
ほとんど不快感を与えずに宣伝活動ができるのは、
彼女たちの姿勢の良さと、
通行人一人一人に対して向けられる爽やかな声、
それからしつこくティッシュを押しつけたりせず、
決して通行の邪魔をしない、その潔い引き際、
謙虚な態度に理由の一端が求められると思います。

一方、街頭演説者たちはどうでしょうか。
威風堂々、と言えばその通りですが、とかく声の大きい彼らは、
熱意のこもった声明を更にマイクで拡張させて、
その信ずるところをひたすら街頭にぶちまけています。
配っているのはティッシュではなくてパンフレット。
しかも、たいてい大人数で列をなしているので、
通りにくいことこの上ないです。
ただでさえ大きな声は威圧的で気が滅入るというのに、酷いのになると、
何やら罵るような口調で他政党の批判をしているような輩までいます。
朝からそんなに怒鳴るなよ、と、こちらが露骨に無視しても、
あちらはもとより大衆に向けて演説しているのだから、おかまいなし。
ああ、これでは勝負にならないなぁ。
と、ついアコムのお姉さんと比べてしまうのですが、
もちろん、彼らの競争相手はアコムのお姉さんではありません。
長い時間をかけて、じっくりと地道に洗練されてきた
消費者金融のコマーシャル活動と違って、
演説者たちのそれは短期集中決戦です。
目的も違えば方法も異なるわけで、
いかにして通りすがりの通行人の足を止めるか、
短い時間にどれだけ多くの人間に名前を覚えてもらえるか、
好印象を与えられるか……
おそらくそのあたりにポイントがあるのでしょう。
だから、多少高圧的にでもアピールするし、大衆の危機感も煽るし、
アコムのお姉さんたちも端っこに追いやる。
端っこに追いやられたアコムのお姉さんは、
それでも恨めしそうな顔色ひとつ見せずにティッシュを配っているから、
心が広いと思います。
もし、演説者と張り合って大声を張り上げたりしたら、
せっかくこれまで築いてきたものをぶち壊しにしてしまうでしょう。

それにしても、街頭演説者の色彩のなさといったら。
短い時間にどれだけ好印象を与えられるか、
という命題を前にして、彼らが選ぶのは、誠意と熱意。
それを前提として、度を超さない程度の個性。
もちろん、彼らは奇抜な個性よりも、主張の内容で勝負するべきですし、
政治家を芸人と同じ基準で判断するのは言語道断ですが、
何か、もっとこう、強烈なインパクトというのか、
エンターテインメント性とでもいうのか……いや、そうでなくても、
一瞬で人を惹きつけるような何かがあってもいいような気がしています。
たとえばそれは、通行人が足を止めて、
もっと続きを聞きたくなるような技巧的話術、
導入部分を洗練した演説の技術であってもよいのです。
あるいは、選挙をそんなふうに考えるのは不埒なことかもしれません。
弁舌は政治の一手段に過ぎず、その一芸に秀でているからといって、
その人物が優れた政治家であるとは限らない……。
しかし、それでも、そんな魅力的な街頭演説をしている人物がいたら、
きっと私は足を止めてその人物を見極めようとするでしょう。

さて。
実は先日、私はそれに該当する人物に遭遇しました。

その人物は、白髪、痩せぎすの老紳士で、
抜け目のない、少し厳しそうな顔つきをしていました。
朝の駅前に立ち、通行人に向かって何事か熱心に訴えているその姿は、
いかにも日本の将来を憂う街頭演説者然としているのですが、
他の演説者とはっきり一線を画することには、
どういうわけか、たった一人で街頭演説を行っているのです。
まさに孤軍奮闘。
ポスターもなければ、後援会の人たちも見当たりません。
さらに加えて奇妙だったのは、
彼から20メートルほど離れた位置に、ずらりと選挙ポスターを並べて
「○○をよろしくお願いします」
と、盛大に選挙活動をしている、別の候補者の一団がいることでした。
──おや、これはいったいなんだろう?
もしかして、候補者同士が鉢合わせてしまったのだろうか。
それとも、あの老紳士は候補者ではなく、後援会の人なのだろうか。
私は、少々困惑しつつ、老紳士のいる方に向かいました。
すると、次第に状況がわかってきて、
どうやら老紳士と、もう一人の候補者グループとは
まったくの無関係であることが知れました。
というのも、彼らの主張する内容はあまりにも次元が違ったし、
お互いにその存在を無視し合っていたからです。
──なるほど。すると老紳士は分が悪いな。
私は思いました。
のべ十数人はいようかという相手の候補者に対して、老紳士は一人です。
私がそうであったように、通りすがりの人々は、
彼をあちらの後援会の一人とみなして素通りすることでしょう。
しかし、彼はそうさせなかった。
十数人を相手取ってなお、彼はそれを凌駕する声量、
半ば怒りを詰め込んだ明瞭な声質でもって、
道行く人々に力強く訴えかけていたのです。
その存在感は明らかに相手候補者を圧倒しており、
より多くの衆目を集めています。
私はその肝の太さにすっかり感心してしまいました。
そして次の瞬間、思わず目を瞠りました。
何を思ったか、老紳士が自分のテリトリーを離れ、
ずいずいと威嚇するように相手陣営に詰め寄っているではありませんか!
──うわ、ケンカでも吹っ掛ける気か!?
私はヒヤヒヤしつつ、老紳士を見守りました。
しかし、彼はあくまでも紳士でした。
相手の候補者に罵詈雑言を浴びせることもなく、
彼はただひたすらに、繰り返し、繰り返し、
彼が最初からずっと駅前の通行人に訴え続けていたその言葉──
すなわち、

「どうだーッ! オロナミンCのぉー、空き瓶の、破片だぁ〜!!」

を、よりいっそう大きな声で叫び続けたのでした。

「どうだーッ!
 オロナミンCのぉー
 空き瓶の、破片だぁ〜〜〜!!」

私はたちまち、もっと続きを聞きたくなりました。
しかし、彼はなかなか先を続けてくれません。
そうこうしているうちにも人々は行き交い、
彼の横を通り過ぎたOLらしき二人組が、
「なに、あの人、なんて言ってた?」
「なんか、オロナミンCの破片がどうとか……」
と、怪訝そうに囁き合っているのが聞こえました。

彼の言葉が人々の心に届くには、まだまだ時が必要でした。
けれど、高らかに掲げられた彼の右腕、
そこに握りしめられた小さな茶色の硝子の破片は、
たしかに私たちの将来を示しているのでした。

「どうだーッ!
 オロナミンCのぉー
 空き瓶の、破片だぁ〜〜〜!!」
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